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科目別対策

行政書士の行政法対策|112点の配点構造と6年分の出題枠から決める学習順序

行政法は行政書士試験で最大の配点を持ち、112点は300点の37.3%にあたります。しかも5肢択一・多肢選択式・記述式の3形式すべてに登場します。ここを制度ごとに暗記するのではなく、誰が・いつまでに・どこへ・何を求めるかという同じ枠で比較すると、得点が安定します。

最終確認:2026年7月31日

01行政法112点は、300点の37.3%。合否はここで決まる

行政書士試験は60問300点で、合格には法令等122点以上・基礎知識24点以上・総得点180点以上の3つが必要です。このうち行政法は112点で、単独で全体の37.3%を占めます。2位の民法76点と合わせると188点、62.7%です。行政法を落として合格するのは、算数として難しくなります。

他の科目と違うのは、5肢択一・多肢選択式・記述式の3つの形式すべてに登場する点です。令和7年度でいえば、5肢択一が問8から問26の19問76点、多肢選択式が問42と問43の2問16点、記述式が問44の1問20点でした。形式が3つあるということは、同じ知識を3通りの出力で使えるようにしておく必要があるということです。

一方で、行政法は他の科目より学習の設計がしやすい科目でもあります。範囲が5つの法律にほぼ限定され、そのそれぞれが誰が誰に何を求める手続かという同じ構造を持っているからです。民法のように事例の組み合わせが無限に広がることはありません。

この記事では、まず公表されている6年分の出題から枠の構造を確認し、そのうえで学習順序、制度ごとの対比表、期間の一覧、条文のどこを読むかを順に扱います。配点と日程は行政書士試験研究センター(https://gyosei-shiken.or.jp/)、条文はe-Gov法令検索によります。

出題形式令和7年度の問題番号問題数と配点行政法112点に占める割合
5肢択一式問8から問2619問76点67.9%
多肢選択式問42と問432問16点14.3%
記述式問441問20点17.9%
行政法の合計上記22問112点300点の37.3%

026年分で、問8から問26の出題枠はほとんど動いていない

行政書士試験研究センターは、令和2年度から令和7年度までの問題PDFを公開しています。この6年分の問8から問26(各年19問、合計114問)について、問題文の冒頭に現れる法律名と論点を並べると、問題番号の枠がほぼ固定されていることがわかります。

下の表は、その枠を整理したものです。問8から問10が行政法総論、問11から問13が行政手続法、問14から問16が行政不服審査法、問17から問19が行政事件訴訟法、問20から問21が国家賠償法、問22から問24が地方自治法、問25から問26が情報公開や判例の横断という並びが、6年間ほぼ変わっていません。

ただし、この分類は当サイトが公表問題の問題文から整理したもので、センターは科目別・分野別の内訳を公表していません。実際に枠から外れる年もあります。令和2年度は問10が地方自治法の契約、令和7年度は問12が個人情報保護法でした。枠は傾向であって、規則ではありません。

それでも、この構造がわかっていることには実務的な意味があります。行政不服審査法と行政事件訴訟法だけで毎年6問24点、地方自治法で3問12点が出るとわかっていれば、どの範囲を捨ててよくないかが決まるからです。行政法で捨てられる範囲は、実はほとんどありません。

問題番号の枠6年間置かれ続けた領域6年の合計問題数令和7年度に実際に出た内容
問8から問10行政法総論(行政行為・行政立法・行政裁量・行政契約・行政調査・行政罰)17問行政行為(処分)、行政罰、行政行為の附款
問11から問13行政手続法(申請に対する処分・不利益処分・行政指導・届出・意見公募)17問弁明の機会の付与、申請に対する処分(問12は個人情報保護法)
問14から問16行政不服審査法(審査請求・審理員・裁決・教示・執行停止)18問行政不服審査法の規定、審査請求と再調査の請求、教示
問17から問19行政事件訴訟法(処分性・原告適格・訴訟要件・判決・その他の抗告訴訟)18問抗告訴訟の対象、出訴期間、差止めの訴え
問20から問21国家賠償法(1条と2条)12問国家賠償法1条、国家賠償法に関する判例
問22から問24地方自治法(条例・住民訴訟・長と議会・国の関与)19問条例の適法性、知事と議会の関係、国又は都道府県の関与
問25から問26情報公開・個人情報保護と、行政法判例の横断13問建築に関わる紛争の判例、行政機関情報公開法

03学習順序:救済の流れに沿って、手続法から入る

行政法の学習を総論から始めると、失敗しやすくなります。行政行為の公定力、瑕疵の治癒、行政裁量といった概念は、具体的な手続を知らない段階では抽象的すぎて定着しないからです。先に行政手続法から入り、行政が処分をする場面を具体的に見てから総論に戻るほうが速く進みます。

推奨する順番は、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法、そして最後に行政法総論です。これは、処分がなされる前の手続、行政内部での争い方、裁判所での争い方、金銭による事後の救済、自治体の仕組み、という時系列と対応しています。

この順番の利点は、比較しながら進められることです。行政手続法の聴聞を学んだあとに行政不服審査法の審理手続を見ると、どちらも意見を述べる機会だが場面が違うと整理できます。行政不服審査法の執行停止を学んだあとに行政事件訴訟法の執行停止を見ると、判断主体と職権の有無の違いが際立ちます。

総論を最後に置くのは、総論の論点の多くが5つの法律の理解を前提にしているからです。処分性の議論は行政事件訴訟法の中で、行政指導の限界は行政手続法の中で、それぞれ具体的に扱われます。総論を独立した箱として最初に暗記しようとすると、意味のわからない用語の羅列になります。

  • 行政手続法から入り、行政法総論は最後に回す
  • 5つの法律を、処分の前・行政内部・裁判所・金銭・自治体という時系列で並べる
  • 新しい法律に入るたび、前の法律の似た制度と横に並べる
  • 1つの法律を完璧にしてから次へ進まない。一巡してから精度を上げる

04行政手続法は、申請に対する処分と不利益処分の2系統に分ける

行政手続法の出題の多くは、申請に対する処分の制度と不利益処分の制度を入れ替えることで誤りを作っています。したがって、この2系統の対応表を先に作れば、選択肢を読んだ瞬間に判定できる問題が増えます。

申請に対する処分の側には、審査基準(5条)、標準処理期間(6条)、申請に対する拒否処分の理由の提示(8条)が並びます。不利益処分の側には、処分基準(12条)、聴聞と弁明の機会の付与(13条)、不利益処分の理由の提示(14条)が並びます。

ここで頻出の引っかけが、義務と努力義務の入れ替えです。審査基準は定めることも公にすることも法的義務ですが、処分基準は定めることも公にすることも努力義務です。標準処理期間は、定めることが努力義務で、定めた場合の公表は義務です。この3つの違いは、条文の語尾を1回確認すれば済みます。

行政指導は、行政手続法32条から36条の2に置かれています。相手方の任意の協力によってのみ実現されること、従わないことを理由に不利益な取扱いをしてはならないこと、書面の交付を求められたら原則として交付しなければならないことが中心です。当サイトでは /topics/administrative-guidance に判断順序を整理してあります。

比較項目申請に対する処分不利益処分
行政庁が定める基準審査基準(5条)処分基準(12条)
基準についての義務定めることも公にすることも法的義務定めることも公にすることも努力義務
期間の定め標準処理期間(6条)。定めるのは努力義務、定めたら公表は義務これに相当する規定は置かれていない
理由の提示拒否処分のときに理由を示す(8条)処分と同時に理由を示すのが原則(14条)
意見を述べる機会制度として置かれていない聴聞または弁明の機会の付与(13条)
典型的な場面許認可の申請に対する許可または拒否営業許可の取消し、業務停止命令

05聴聞と弁明の機会の付与を、4項目で区別する

不利益処分の意見陳述手続は2種類あり、どちらが適用されるかは処分の重さで決まります。許認可等を取り消す処分、資格や地位を直接はく奪する処分、法人の役員等の解任を命ずる処分などは聴聞、それ以外は弁明の機会の付与です(13条1項)。

この2つは、手続の重さがそのまま制度の設計に反映されています。聴聞は口頭で行うのが原則で、当事者は文書等の閲覧を求めることができ、代理人を選任でき、主宰者の許可を得て行政庁の職員に質問を発することもできます。弁明の機会の付与は書面の提出によるのが原則で、文書等の閲覧の規定は置かれていません。

出題では、弁明の機会の付与に聴聞の要素を混ぜる形が繰り返し使われます。弁明は口頭で行うのが原則である、弁明でも文書等の閲覧を請求できる、といった記述です。下の表の4項目を覚えておけば、この種の肢はすべて判定できます。

令和7年度は問11で弁明の機会の付与が単独で出題されました。令和5年度は問12が聴聞です。6年間で、この領域は繰り返し問われています。当サイトの /topics/hearing-and-explanation に、判断の順序と引っかけの型をまとめてあります。

比較項目聴聞弁明の機会の付与
対象となる処分許認可等の取消し、資格・地位のはく奪、役員等の解任命令など上記以外の不利益処分(業務停止命令など)
手続の方式口頭によるのが原則書面の提出によるのが原則
文書等の閲覧求めることができる規定が置かれていない
行政庁の職員への質問主宰者の許可を得てできる制度として置かれていない

06審査請求と取消訴訟を、同じ5項目で比較する

行政不服審査法と行政事件訴訟法は、行政法の中で最も多く問われる領域です。6年分の問14から問19、合計36問がここに置かれています。この2つを別々に覚えると、期間や相手方が混ざります。同じ項目の表で横に並べるのが最短です。

並べる項目は、判断する主体、相手方、主観的な期間、客観的な期間、執行停止、結論の呼び方です。この順番は、実際に不服を申し立てるときにたどる順序と一致しています。誰が判断し、誰に対して、いつまでに、その間に処分を止められるか、決着したら何が起きるか、という流れです。

とくに注意すべきなのは相手方です。審査請求は、処分庁等に上級行政庁がない場合などは当該処分庁等、それ以外の場合は当該処分庁等の最上級行政庁が原則です(行政不服審査法4条)。取消訴訟は、処分をした行政庁が国または公共団体に所属する場合、その国または公共団体が被告になります(行政事件訴訟法11条1項)。行政庁を被告にする、と書いてある肢は誤りです。

執行停止も混同しやすい領域です。どちらも執行不停止が原則ですが、審査請求では処分庁の上級行政庁または処分庁である審査庁は職権でも執行停止ができます(行政不服審査法25条2項)。取消訴訟では裁判所が申立てにより決定します(行政事件訴訟法25条2項)。裁判所が職権で執行停止をすることはできません。

比較項目審査請求(行政不服審査法)取消訴訟(行政事件訴訟法)
判断する主体審査庁(行政機関)裁判所
相手方原則として処分庁等の最上級行政庁。上級行政庁がなければ処分庁等(4条)処分をした行政庁が所属する国または公共団体(11条1項)
主観的な期間処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月(18条1項)処分または裁決があったことを知った日から6か月(14条1項)
客観的な期間処分があった日の翌日から起算して1年(18条2項)処分または裁決の日から1年(14条2項)
執行停止執行不停止が原則。処分庁の上級行政庁または処分庁である審査庁は職権でもできる(25条2項)執行不停止が原則。裁判所が申立てにより決定し、職権ではできない(25条2項)
結論の呼び方裁決(認容・棄却・却下)判決(認容・棄却・却下のほか事情判決)

07期間は、数字ではなく起算点の言い回しごと覚える

行政法で最も多く狙われるのが期間です。3か月と6か月、1か月と3か月、1年と6か月を入れ替えるだけで誤りの肢が作れるため、出題側にとって作りやすい形になっています。数字だけを覚えると、この入れ替えを見抜けません。

さらに厄介なのが、起算点の言い回しの違いです。行政不服審査法18条は、処分があったことを知った日の翌日から起算してと書いています。一方、行政事件訴訟法14条1項は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月と書いています。翌日から起算してという文言が入っているかどうかが、法律によって違います。

下の表は、行政法で覚えるべき主要な期間を、条文番号と起算点の言い回しごと並べたものです。この表を1枚作って、週に1回だけ見返す運用にすると、期間の失点はほぼなくなります。当サイトの /memory/administrative-law には、これを含む188項目を科目別に置いてあります。

なお、いずれの期間にも正当な理由があるときの例外が置かれています。期間を過ぎたら絶対に争えない、と書いてある肢は誤りになります。原則と例外の逆転も、行政法の頻出の作り方です。

制度主観的な期間客観的な期間条文と起算点の言い回し
審査請求3か月1年行政不服審査法18条。知った日の翌日から起算して/処分があった日の翌日から起算して
再調査の請求3か月1年行政不服審査法54条。審査請求と同じ言い回し
再審査請求1か月1年行政不服審査法62条。原裁決があったことを知った日の翌日から起算して
取消訴訟6か月1年行政事件訴訟法14条。知った日から/処分または裁決の日から。翌日から起算してという文言はない
意見公募手続の意見提出期間30日以上定めはない行政手続法39条3項。公示の日から起算して
住民監査請求1年同じく1年地方自治法242条2項。当該行為のあった日または終わった日から

08行政事件訴訟法は、訴訟要件を4つに分けて押さえる

取消訴訟で問われるのは、ほとんどが訴訟要件です。本案の勝ち負けではなく、そもそも訴えが受け付けられるかという入口の議論です。訴訟要件は、処分性、原告適格、狭義の訴えの利益、被告適格と出訴期間の4つに整理できます。

処分性は、公権力の主体たる国または公共団体の行為のうち、その行為によって国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものかどうかで判断されます。判例では、認められた例と否定された例を2つずつ言えるようにしておくと、初見の肢でも当たりがつきます。

原告適格は、処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者かどうかです。行政事件訴訟法9条2項は、処分の相手方以外の者について判断するとき、当該法令の趣旨および目的、当該処分において考慮されるべき利益の内容および性質を考慮すべきことを定めています。近隣住民や競業者が原告になれるかという形で出ます。

狭義の訴えの利益は、訴訟を続ける実益がまだあるかという問題です。処分の効果が期間の経過で消滅した場合や、建築工事が完了した場合に争われます。令和6年度は問17がこの論点でした。当サイトの /topics/disposition-nature、/topics/standing-to-sue、/topics/benefit-of-suit にそれぞれ判断順序を置いてあります。

  • 処分性:国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定するか
  • 原告適格:法律上の利益を有するか。9条2項の考慮事項を条文の言葉で言えるようにする
  • 狭義の訴えの利益:処分を取り消して回復すべき利益がまだ残っているか
  • 被告適格と出訴期間:被告は行政庁ではなく国または公共団体。期間は知った日から6か月
  • 義務付け訴訟・差止訴訟・無効等確認訴訟は、取消訴訟が使えない場面の受け皿として位置づける

09国家賠償法は、1条と2条を要件で分ける

国家賠償法は毎年2問、6年で12問が出ています。条文が6条しかない短い法律ですが、判例の蓄積が厚く、択一では判例の結論を問う形が中心になります。まず1条と2条の要件の違いを固めてから、判例に入ります。

1条は、公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を加えた場合の責任です。過失が要件に入っています。国または公共団体が賠償責任を負い、加害公務員個人は原則として被害者に対して直接責任を負いません。求償できるのは、公務員に故意または重大な過失があったときです(1条2項)。

2条は、道路、河川その他の公の営造物の設置または管理に瑕疵があったために他人に損害を生じた場合の責任です。ここには過失の要件がありません。通常有すべき安全性を欠いているかどうかで判断されます。設置管理者に落ち度がなくても責任が生じ得る点が、1条との最大の違いです。

出題では、この2つの要件を入れ替える形が使われます。営造物責任にも過失が必要である、公務員個人が直接責任を負う、といった記述です。当サイトでは /topics/state-compensation-public-authority と /topics/state-compensation-public-facilities に、それぞれの判断順序と主要判例を整理してあります。

比較項目国家賠償法1条国家賠償法2条
対象公権力の行使に当たる公務員の行為道路、河川その他の公の営造物の設置または管理
過失の要否故意または過失が必要過失は要件ではない。通常有すべき安全性を欠くかで判断
責任を負う者国または公共団体。加害公務員は原則として直接責任を負わない設置または管理に当たる国または公共団体
求償できる場合公務員に故意または重大な過失があるとき(1条2項)他に損害の原因について責任を負うべき者があるとき(2条2項)
典型的な争点規制権限の不行使、職務行為の違法性、公権力の範囲道路や河川の管理水準、自然公物と人工公物の区別

10地方自治法は毎年3問。数字が出る領域だけを確実にする

地方自治法は6年間で19問と、単一の法律としては最も多く出ています。条文数は膨大ですが、出題される領域は限られています。条例と規則、直接請求、住民監査請求と住民訴訟、長と議会の関係、国または都道府県の関与の5つでほぼ説明できます。

このうち直接請求は、数字が明確に出る領域です。条例の制定改廃の請求は選挙権を有する者の総数の50分の1以上の連署で長に対して行い、事務の監査請求は同じく50分の1以上で監査委員に対して行います。議会の解散請求、議員や長の解職請求は原則として3分の1以上で選挙管理委員会に対して行います(人口に応じた緩和があります)。

住民監査請求には、当該行為のあった日または終わった日から1年という期間制限があります(242条2項)。住民訴訟は住民監査請求を前置し、4つの請求類型が置かれています。とくに4号請求は、地方公共団体の執行機関に対して、職員などへの損害賠償請求をするよう求める形をとります。

長と議会の関係では、再議、専決処分、不信任議決と解散が問われます。令和7年度は問23が知事と議会の関係、問24が国または都道府県の関与でした。当サイトの /topics/local-autonomy に、この領域の数値と判断順序を整理してあります。

  • 条例の制定改廃と事務の監査は50分の1以上、解散と解職は原則3分の1以上
  • 請求先を取り違えない。条例は長、事務の監査は監査委員、解散と解職は選挙管理委員会
  • 住民監査請求は、行為があった日または終わった日から1年
  • 住民訴訟は住民監査請求の前置が必要。4つの請求類型を区別する
  • 国の関与は、助言・勧告、資料の提出の要求、是正の要求、同意、許可といった類型で覚える

11行政法総論は、深入りしてよい場所としてはいけない場所がある

行政法総論は問8から問10の枠で毎年3問前後が出ますが、扱う範囲が最も広く、学説の対立まで追うときりがありません。ここで時間を使いすぎると、確実に出る救済法の演習量が足りなくなります。

深入りしてよいのは、条文または判例で結論が確定している部分です。行政立法における法規命令と行政規則の区別、行政行為の附款の種類、行政上の強制執行の手段(代執行・執行罰・直接強制・強制徴収)とその根拠法、行政罰における行政刑罰と秩序罰の違いなどです。いずれも定義と具体例の対応を押さえれば足ります。

深入りしてはいけないのは、学説の対立そのものです。公定力の根拠をめぐる議論や、行政行為の効力の理論的説明を学説単位で追う必要はありません。6年分の出題を見る限り、学説の対立を正面から問う形はまれで、多くは判例の結論と条文の適用を問う形です。

行政裁量は総論の中でも出題頻度が高い領域ですが、抽象的な裁量論より、判例がどの基準で裁量の逸脱・濫用を認定したかを見るほうが実用的です。令和5年度の問10は在留期間更新の許可申請、令和7年度の問10は行政行為の附款でした。当サイトの /topics/administrative-discretion と /topics/administrative-enforcement に整理があります。

12記述式の問44は、6年連続で行政法から出ている

記述式3問60点のうち、問44は令和2年度から令和7年度まで6年連続で行政法です。配点は20点、300点の6.7%にあたります。行政法の学習は、この20点を取りにいく前提で組む価値があります。

6年分を並べると、抗告訴訟の類型と被告を問う形が繰り返されています。無効等確認訴訟、非申請型義務付け訴訟、差止訴訟と仮の差止め、競願関係における取消訴訟の対象、裁決取消訴訟といった具合です。行政手続法から出た年(令和3年度)もありますが、中心は行政事件訴訟法です。

したがって、記述式のための準備は、行政事件訴訟法の訴訟類型を1枚の表にすることから始まります。取消訴訟、無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟、申請型義務付け訴訟、非申請型義務付け訴訟、差止訴訟の6つについて、どういう場面で使うか、被告は誰かを言えるようにします。

書くときの型は、誰を被告として、何を対象に、どの訴訟を提起するか、の3要素です。この3つを10字前後ずつでつなぐと40字前後になります。仮の救済(執行停止、仮の義務付け、仮の差止め)を併せて問われる年もあるため、本案と仮の救済の組み合わせも覚えておきます。

年度問44で問われた場面軸になる制度
令和7年度審査請求の裁決に手続上の瑕疵があった場合の争い方裁決固有の瑕疵と、裁決の取消訴訟の被告
令和6年度競願関係で免許を得られなかった者の争い方取消訴訟の対象となる処分の特定と被告
令和5年度議会の出席停止の懲罰が議決される前に止める手段差止訴訟と仮の救済の組み合わせ
令和4年度違反建築物への是正命令を行政に出させる方法非申請型義務付け訴訟と、重大な損害という訴訟要件
令和3年度文部科学大臣の勧告に不服がある場合に取れる手段行政指導の定義と、行政手続法上の求め
令和2年度出訴期間経過後に換地処分の効力を争う方法無効等確認訴訟の被告と対象

135肢択一の誤りは、4つの型で作られている

行政法の5肢択一は、正しい記述を少しだけ変えて誤りを作ります。変え方には型があり、6年分を読むとほぼ4つに収まります。この型を知ったうえで選択肢を読むと、同じ知識量でも判定できる肢が増えます。

第一の型は主体のすり替えです。審査請求先を処分庁と最上級行政庁で入れ替える、執行停止の判断主体を裁判所と審査庁で入れ替える、取消訴訟の被告を行政庁と国または公共団体で入れ替える、といった形です。選択肢を読むときは、まず主語に印を付けてください。

第二の型は期間の改変です。審査請求の3か月を6か月に、取消訴訟の6か月を3か月に、再審査請求の1か月を3か月に変えます。起算点の言い回しを変える形もあります。数字が出てきたら、必ず制度名とセットで照合します。

第三の型は義務と努力義務の入れ替え、第四の型は原則と例外の逆転です。審査基準は義務なのに努力義務と書く、処分基準は努力義務なのに義務と書く、執行不停止が原則なのに執行停止が原則と書く、期間を過ぎたら例外なく争えないと書く、といった形です。条文の語尾と、ただし書の有無を確認する習慣が効きます。

  • 主体のすり替え:主語に印を付けて読む。誰が判断し、誰に求めるか
  • 期間の改変:数字は必ず制度名とセットで照合する
  • 義務と努力義務の入れ替え:条文の語尾(しなければならない/努めなければならない)を確認する
  • 原則と例外の逆転:ただし書や、正当な理由があるときという例外規定の有無を見る

14条文のどこを読むか。e-Gov法令検索で足りる

行政法は条文数が多く見えますが、実際に読む必要があるのは限られています。行政手続法は46条まで、行政事件訴訟法も46条まで、行政不服審査法は87条まで、国家賠償法は6条までです。このうち出題の中心になる条文は、下の表の範囲でほぼ尽きます。

地方自治法だけは条文数が桁違いに多く、全体を読むのは現実的ではありません。直接請求、住民監査請求と住民訴訟、長と議会の関係、国または都道府県の関与の4領域に絞り、それ以外は問題を解いて出てきたときに条文を確認する運用にします。

条文はe-Gov法令検索で無料で読めます。紙で線を引きたい場合は行政書士試験用の条文集を1冊用意する価値がありますが、必須ではありません。重要なのは、問題を解いていて迷ったときに1分以内で条文にたどり着ける状態を作っておくことです。

読み方のコツは、条文を頭から通読しないことです。まず見出し(条文のカッコ書きの表題)だけを追い、その法律にどんな制度が並んでいるかの地図を作ります。地図ができてから、問題で出てきた条文をピンポイントで読みます。この順番なら、行政手続法の全体像は1時間で把握できます。

法律e-Gov法令検索のURL優先して読む条文後回しにしてよい部分
行政手続法https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC00000000885条・6条・8条、12条から14条、32条から36条の2、37条、39条地方公共団体の措置に関する規定と罰則
行政不服審査法https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC00000000682条から5条、9条、18条、25条、43条、46条から49条、82条行政不服審査会の組織と運営の細目
行政事件訴訟法https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC00000001393条、9条、11条、14条、25条、31条から33条、36条、37条の2から37条の4、46条民衆訴訟と機関訴訟の細目
国家賠償法https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC00000001251条から4条。全6条なので通読しても短い6条の相互保証は結論だけ押さえる
地方自治法https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC000000006714条、74条から88条、176条、242条、242条の2、245条以下財務と組織に関する大部分の規定

15行政法の演習を、どう回すか

行政法は範囲が明確なので、演習の設計もしやすい科目です。当サイトには行政法の○×一問一答が240問あり、重要度Sが75問、Aが98問、Bが51問、Cが16問という内訳です。まず重要度Sの75問を回し、8割を超えたらAに進むという順序が素直です。

○×形式を使う理由は、5肢択一の失点の多くが1肢単位の判断の甘さから生じるためです。5つの中から正解を選ぶ形式では消去法で当たってしまい、どの肢が判定できていないかが見えません。1肢ずつ正誤を判定すれば、抜けが特定できます。/drill で科目を行政法に絞り込めます。

誤答が出たら、その理由が知識不足なのか比較不足なのかを分けます。比較不足なら /topics の該当論点に戻ります。行政法は24論点を用意してあり、行政手続法系、行政不服審査法系、行政事件訴訟法系、国家賠償法系、地方自治法系、総論系に分かれています。判断の順序、根拠条文、覚えるべき数値、引っかけの型が同じ並びで置いてあります。

数値と期間が混ざる場合は /memory/administrative-law に戻ります。行政法の暗記表は188項目で、審査請求期間と出訴期間のように、単独で覚えると混ざる数値を横に並べてあります。過去問はセンターが公開している令和2年度から令和7年度までの6年分を使ってください。当サイトは掲載の許諾を得ていないため、過去問の本文は載せていません。

段階使うものURL次へ進む条件
行政法の全体像をつかむ60論点のうち行政法の24論点/topics5つの法律の役割を1行ずつ書ける
1肢単位の判定力をつける行政法の一問一答240問(重要度Sの75問から)/drill重要度Sで正答率8割を超える
比較不足を解消する審査請求と取消訴訟などの論点整理/topics/appeal-period対象・相手方・期間・執行停止・効力を横に並べて言える
数値と期間を固める行政法の暗記表188項目/memory/administrative-law6つの期間を条文番号つきで言える
本試験の形式に慣れるセンター公開の過去問6年分(問8から問26)https://gyosei-shiken.or.jp/doc/exam/index.html19問中14問以上を安定して正解する
誤答を処理する復習リスト/review同じ論点で3回続けて間違えることがなくなる

16行政法にかける時間の目安と、止め時

行政法にかける時間は、総学習時間の35%から40%が目安です。総時間800時間なら280時間から320時間、総時間400時間なら140時間から160時間です。この比率は配点の37.3%におおむね対応しています。なお学習時間の目安は公的な統計ではなく、配点から逆算した設計値として扱ってください。

内訳は、行政手続法に2割、行政不服審査法に2割、行政事件訴訟法に2割5分、国家賠償法に1割、地方自治法に1割5分、総論に1割程度が一つの形です。行政事件訴訟法をやや厚くするのは、記述式の問44がここから出やすいためです。

止め時の判断は、時間ではなく到達度で行います。過去問6年分の問8から問26(合計114問)のうち、9割以上で正解の理由を説明できる状態になれば、行政法にこれ以上の時間を置く必要はありません。その時間は民法か基礎知識に回すほうが総得点に効きます。

逆に、直前期に行政法の正答率が落ちている場合は、範囲を広げるのではなく期間と主体の確認に戻ってください。行政法の失点は、知らない論点ではなく、知っているはずの数字と主語の取り違えで起きることが最も多い領域です。

よくある質問

行政法は何点分出題されますか。

112点で、300点満点の37.3%です。令和7年度の内訳は、5肢択一が問8から問26の19問76点、多肢選択式が問42と問43の2問16点、記述式が問44の1問20点でした。単独の科目としては最大で、2位の民法76点と合わせると188点、全体の62.7%になります。5肢択一・多肢選択式・記述式の3形式すべてに登場する唯一の科目でもあります。

行政法は何から始めればよいですか。

行政手続法から始めてください。総論から入ると、公定力や瑕疵の治癒といった抽象的な概念が具体例なしに並ぶため定着しません。推奨する順番は、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法、最後に行政法総論です。これは処分がなされる前の手続、行政内部での争い方、裁判所での争い方、金銭による事後の救済、自治体の仕組みという時系列に対応しています。

審査請求と取消訴訟の違いはどう整理すればよいですか。

判断する主体、相手方、主観的な期間、客観的な期間、執行停止、結論の呼び方の6項目で横に並べます。相手方は、審査請求が原則として処分庁等の最上級行政庁(行政不服審査法4条)、取消訴訟が処分庁の所属する国または公共団体(行政事件訴訟法11条1項)です。期間は、審査請求が知った日の翌日から起算して3か月、取消訴訟が知った日から6か月です。執行停止はどちらも執行不停止が原則ですが、審査請求では処分庁の上級行政庁または処分庁である審査庁が職権でもできるのに対し、裁判所は職権ではできません。

行政法で頻出のテーマはどれですか。

行政書士試験研究センターは分野別の出題内訳を公表していないため、公式の頻出データはありません。ただし公開されている令和2年度から令和7年度までの問題PDFで問8から問26を見ると、問11から問13が行政手続法、問14から問16が行政不服審査法、問17から問19が行政事件訴訟法、問20から問21が国家賠償法、問22から問24が地方自治法という枠がほぼ動いていません。6年114問の内訳は、地方自治法19問、行政不服審査法18問、行政事件訴訟法18問、行政手続法17問、行政法総論17問、情報公開等13問、国家賠償法12問です。

地方自治法はどこまで勉強すればよいですか。

条文数は膨大ですが、出題は5領域にほぼ限られます。条例と規則、直接請求、住民監査請求と住民訴訟、長と議会の関係、国または都道府県の関与です。数字が明確に出るのは直接請求で、条例の制定改廃と事務の監査は選挙権者の50分の1以上、議会の解散と議員・長の解職は原則3分の1以上です。請求先も取り違えないでください。住民監査請求には、行為があった日または終わった日から1年という期間制限があります。

行政法の記述式はどう対策すればよいですか。

問44は令和2年度から令和7年度まで6年連続で行政法から出ています。内容は抗告訴訟の類型と被告を問う形が繰り返されており、無効等確認訴訟、非申請型義務付け訴訟、差止訴訟と仮の差止め、取消訴訟の対象の特定、裁決取消訴訟が実際に出ています。対策としては、行政事件訴訟法の6つの訴訟類型について、どの場面で使うか、被告は誰かを1枚の表にしてください。書くときの型は、誰を被告として、何を対象に、どの訴訟を提起するかの3要素です。