商法・会社法
商法総則・商行為
表見支配人に擬制されるのは裁判外の行為の代理権だけで、裁判上の行為は含まれません。商業登記の「正当な事由」に病気や多忙という主観的事情は入らない点、商事留置権の目的物が債務者所有に限られる点も頻出です。
要点 8件・確認問題 8問
商行為の分類
商行為は3種に分かれる。絶対的商行為は誰が行っても商行為となるもので、投機購買とその実行行為、投機売却とその実行行為、取引所においてする取引、手形その他の商業証券に関する行為の4種である(501条)。営業的商行為は営業として行うときに商行為となるもので、賃貸借・製造加工・電気ガス供給・運送・請負・出版・場屋取引・両替・保険・寄託の引受けなど13種が列挙される(502条)。附属的商行為は商人がその営業のためにする行為である(503条)。
覚え方絶対は四つ、営業的は十三、附属的は商人の営業のため
01重要暗記項目
商行為の分類
商行為は3種に分かれる。絶対的商行為は誰が行っても商行為となるもので、投機購買とその実行行為、投機売却とその実行行為、取引所においてする取引、手形その他の商業証券に関する行為の4種である(501条)。営業的商行為は営業として行うときに商行為となるもので、賃貸借・製造加工・電気ガス供給・運送・請負・出版・場屋取引・両替・保険・寄託の引受けなど13種が列挙される(502条)。附属的商行為は商人がその営業のためにする行為である(503条)。
ひっかけ注意運送や保険の引受けを絶対的商行為とする誤りが狙われる。これらは営業として行うことが必要な営業的商行為である。
商行為の代理と非顕名
商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでした行為も本人に対して効力を生じる(商法504条本文)。ただし相手方が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない(ただし書)。最大判昭和43年4月24日は、ただし書の場合でも本人と相手方の法律関係は当然には否定されず、善意の相手方は本人との法律関係を主張することも代理人との法律関係を主張することもできる選択権を有するとした。商行為の委任による代理権は本人の死亡によって消滅しない(506条)。
ひっかけ注意商行為の委任による代理権が本人の死亡で消滅するとする誤りが狙われる。民法111条1項1号の例外である。
商号と名板貸人の責任
名板貸人の責任(商法14条・会社法9条)の要件は、自己の商号を使用して営業または事業を行うことを他人に許諾したこと、相手方が営業主体を誤認したこと、誤認と取引との間に因果関係があることである。責任の範囲は「当該取引によって生じた債務」に限られ、名板借人が起こした交通事故のような取引外の不法行為による債務には及ばない(最判昭和52年12月23日)。相手方に悪意または重大な過失があるときは保護されない。最判平成7年11月30日はスーパー内のテナント営業について同条を類推適用した。
ひっかけ注意名板借人の交通事故による損害賠償債務にも名板貸人が責任を負うとする誤りが狙われる。取引外の不法行為には及ばない。
商業登記の効力
登記すべき事項は登記の後でなければ善意の第三者に対抗できない(商法9条1項前段。消極的公示力)。登記後は悪意が擬制されるが、災害による交通途絶や登記簿の滅失など客観的な障害である「正当な事由」があるときは対抗できない(同項後段)。多忙や病気といった主観的事情は正当な事由にあたらない。また故意または過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることを善意の第三者に対抗できない(同2項)。
ひっかけ注意登記後は例外なく第三者に対抗できるとする誤りが狙われる。正当な事由がある第三者には対抗できない。
支配人の代理権と競業避止義務
支配人は商人に代わってその営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする包括的代理権を有し(商法21条1項)、他の使用人を選任し解任することもできる(同2項)。代理権に加えた制限は善意の第三者に対抗できない(同3項)。支配人は商人の許可がなければ、自ら営業を行うこと、自己または第三者のために商人の営業の部類に属する取引をすること、他の商人または会社の使用人となること、会社の取締役・執行役・業務執行社員となることができない(23条1項)。
ひっかけ注意支配人の代理権が裁判外の行為に限られるとする誤りが狙われる。裁判上の行為も含む点が表見支配人との違いである。
表見支配人
商法24条・会社法13条の表見支配人は、本店または支店の事業の主任者であることを示す名称(支店長・営業所長等)を付された使用人に、当該本店または支店の事業に関する裁判外の行為の代理権を擬制する制度である。裁判上の行為は含まれない点が支配人と異なる。相手方が悪意であるときは適用されない(ただし書)。最判昭和37年5月1日は、当該営業所が本店から離れて独自に営業活動を決定しうる実質を備えていることを要求した。
ひっかけ注意表見支配人にも裁判上の行為の代理権が擬制されるとする誤りが定番。裁判外の行為に限られる。
商事留置権
商法521条の商事留置権の要件は、当事者双方が商人であること、双方のために商行為となる行為によって生じた債権であること、債権が弁済期にあること、債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者所有の物または有価証券であることである。民事留置権と異なり債権と目的物との牽連性は不要である一方、目的物が債務者所有のものに限られる点で範囲が狭い。当事者が別段の意思表示をすれば排除できる。
ひっかけ注意商事留置権にも牽連性が必要とする誤り、および第三者所有物にも成立するとする誤りが狙われる。
商人の意義と擬制商人
商人には、自己の名をもって商行為をすることを業とする固有の商人(商法4条1項)と、店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者および鉱業を営む者である擬制商人(同2項)がある。農家が自家生産物を店頭で販売する行為は、利益を得て譲渡する意思での有償取得を伴わないため501条・502条の商行為にあたらないが、擬制商人として商人となる。小商人(営業のために使用する財産の価額が50万円を超えない商人)には商業登記や商号登記の規定が適用されない(7条)。
ひっかけ注意自家生産物を販売する農家は商行為をしていないから商人でないとする誤りが狙われる。擬制商人にあたる。
02正誤を分ける確認順
- 1商人か商行為かを確定する。絶対的商行為は1回限りでも商行為、営業的商行為は営業として行うとき、附属的商行為は商人が営業のためにするとき
- 2使用人の権限を見る。支配人は裁判上・裁判外の一切の行為、表見支配人は当該営業所の裁判外の行為に限られる
- 3登記の効力を当てはめる。登記前は善意の第三者に対抗できず、登記後は客観的障害という正当な事由がある場合だけ対抗できない
03覚える数値
- 場屋営業 責任を負わない旨の掲示は無効
- 高価品 種類と価額の通知がなければ責任を負わない
04本試験の引っかけ
- 表見支配人に裁判上の行為の代理権まで擬制する肢。裁判外の行為に限られる
- 商業登記の正当な事由に病気や多忙を含める肢。災害による交通途絶など客観的障害に限られる
- 場屋営業者が責任を負わない旨を掲示すれば免責されるとする肢。商法596条3項が明文で否定している
05おさえる判例
テナント営業と名板貸最判平成7年11月30日
スーパーマーケットのテナント営業について名板貸人の責任の規定を類推適用し、店舗の外観を信頼した顧客の保護を認めた
06一次情報
- 根拠
- 商法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
商法総則・商行為の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
商法・会社法重要度 A頻出度 10/24(編集部の目安)
商業登記の効力
登記すべき事項は登記の後でなければ善意の第三者に対抗することができないが、いったん登記がされた以上、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときであっても、これを対抗することができる。
全620問から科目・重要度で解く
行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。