行政法
狭義の訴えの利益
処分の効果が消えた後もなお取消しで回復すべき法律上の利益があるかを、判決時を基準に判断します。工事が完了すれば消える建築確認と、完了しても消えない土地改良事業の認可を取り違えるのが典型的な失点です。
要点 2件・確認問題 5問
狭義の訴えの利益
最判昭和59年10月26日は、建築確認は工事を適法に行えるという法的効果を有するにとどまるから、工事が完了すれば建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるとした。最判昭和55年11月25日は、免許停止処分の日から1年間無違反・無処分で経過すれば道路交通法上不利益に扱われるおそれがなくなり訴えの利益は消滅し、名誉・感情・信用の損害は事実上の効果にすぎないとした。最大判昭和28年12月23日(皇居前広場事件)も集会予定日の経過で訴えの利益を否定している。
覚え方工事完了・1年経過・期日経過で訴えの利益は消える
01重要暗記項目
狭義の訴えの利益
最判昭和59年10月26日は、建築確認は工事を適法に行えるという法的効果を有するにとどまるから、工事が完了すれば建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるとした。最判昭和55年11月25日は、免許停止処分の日から1年間無違反・無処分で経過すれば道路交通法上不利益に扱われるおそれがなくなり訴えの利益は消滅し、名誉・感情・信用の損害は事実上の効果にすぎないとした。最大判昭和28年12月23日(皇居前広場事件)も集会予定日の経過で訴えの利益を否定している。
ひっかけ注意消滅時点をずらす肢(建築確認では「完了検査済証の交付時」など)。名誉や信用の回復も法律上の利益に含まれるとする肢も誤りである。
訴えの利益が失われない場合
最判平成4年1月24日(八鹿町土地改良事業事件)は、事業がすべて完了して原状回復が社会通念上不可能であるとしても、それは事情判決(31条)の適用に関して考慮されるべき事柄であり、認可処分の取消しを求める法律上の利益が消滅するものではないとした。これに対し最判昭和57年9月9日(長沼ナイキ訴訟)は、代替施設の設置により洪水等の防止効果が確保されたときは保安林指定解除の取消しを求める訴えの利益は失われるとした。訴えの利益は判決時を基準に判断される。
ひっかけ注意建築確認の判例と同様に「事業完了で訴えの利益が消える」と即断させる肢。土地改良事業では訴えの利益が残る点が対比の急所である。
02正誤を分ける確認順
- 1処分の効果が期間の経過などで失われていないかを確認し、失われていても9条1項括弧書の回復すべき利益が残るかを次に見る
- 2残る利益が法律上のものかを判定する。名誉・信用・感情の回復は事実上の効果にすぎず含まれない
- 3判断の基準時は口頭弁論終結時(判決時)である。代替施設の設置など訴訟中の事情変更まで織り込んで判断する
03覚える数値
- 免許停止処分 1年間の無違反・無処分で訴えの利益が消滅
04本試験の引っかけ
- 事業が完了すれば常に訴えの利益が消えるとする肢。土地改良事業では原状回復が社会通念上不可能でも訴えの利益は残る
- 名誉や信用の回復も法律上の利益に含まれるとする肢。事実上の効果は含まれない
- 訴えの利益の存否を訴え提起時で固定する肢。基準時は判決時である
05おさえる判例
建築確認取消請求事件最判昭和59年10月26日
建築確認は工事を適法に行えるという法的効果を持つにとどまるから、工事完了後は取消しを求める訴えの利益が失われる
八鹿町土地改良事業事件最判平成4年1月24日
事業完了により原状回復が社会通念上不可能でも、それは事情判決の適用で考慮すべき事柄であり、訴えの利益は消滅しない
保安林指定解除事件(長沼ナイキ訴訟)最判昭和57年9月9日
代替施設の設置により洪水・渇水の防止効果が確保されたときは、回復すべき法律上の利益がなくなる
06一次情報
- 根拠
- 行政事件訴訟法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
狭義の訴えの利益の○×一問一答
1/5問解答 0・正解 0
行政法重要度 S頻出度 18/24(編集部の目安)
狭義の訴えの利益
最高裁は、建築確認を受けた建築物の工事が完了した後においても、周辺住民は当該建築確認の取消しを求める訴えの利益を失わないと判断した。
全620問から科目・重要度で解く
行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。