民法
請負・委任などの典型契約
請負は仕事を完成できなくても、可分な部分で注文者が利益を受ける限度で割合的報酬を請求できます。委任は無償でも善管注意義務を負うのに、無報酬の受寄者は自己の財産と同一の注意で足りるという注意義務の段差も要注意です。
要点 8件・確認問題 8問
請負人の契約不適合責任
請負の契約不適合には売買の規定が準用され(559条)、注文者は追完(修補)請求・報酬減額請求・損害賠償請求・解除ができる。注文者の供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じた不適合については責任を追及できないが、請負人がその材料または指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは別である(636条)。期間制限は不適合を知った時から1年以内の通知である(637条1項)。最判平成9年2月14日は、瑕疵の修補に代わる損害賠償債権と報酬債権が同時履行の関係に立つとした。
覚え方注文者の材料・指図が原因なら請負人は免責、ただし知って黙れば責任
01重要暗記項目
請負人の契約不適合責任
請負の契約不適合には売買の規定が準用され(559条)、注文者は追完(修補)請求・報酬減額請求・損害賠償請求・解除ができる。注文者の供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じた不適合については責任を追及できないが、請負人がその材料または指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは別である(636条)。期間制限は不適合を知った時から1年以内の通知である(637条1項)。最判平成9年2月14日は、瑕疵の修補に代わる損害賠償債権と報酬債権が同時履行の関係に立つとした。
ひっかけ注意建物その他土地の工作物は瑕疵があっても解除できないとする改正前の旧635条ただし書の記述が誤りとして出る。同条は削除された。
委任の任意解除権
委任は各当事者がいつでも解除できる(651条1項)。相手方に不利な時期に解除したとき、および委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く)をも目的とする委任を解除したときは損害を賠償しなければならないが、やむを得ない事由があったときは不要である(同2項)。解除の効力は将来に向かってのみ生じる。委任は委任者・受任者の死亡や破産手続開始の決定、受任者の後見開始の審判により終了する(653条)。
ひっかけ注意受任者の利益をも目的とする委任は解除できないとする誤りが狙われる。解除自体は可能で、損害賠償の問題になる。
請負の報酬支払時期
報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払うのが原則で、引渡しを要しないときは仕事を終了した後に請求できる(633条・624条1項)。634条は、注文者の責めに帰することができない事由により仕事を完成することができなくなったとき、および仕事の完成前に請負が解除されたときについて、既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなして割合的報酬を認める。注文者の責めに帰すべき事由で完成できなくなったときは536条2項により全額を請求できる。
ひっかけ注意仕事が完成しなければ一切報酬を請求できないとする誤りが狙われる。634条の割合的報酬がある。
危険負担
改正により債権者主義を定めていた旧534条は削除された。当事者双方の責めに帰することができない事由により履行が不能となったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができる(536条1項)が、反対給付債務そのものが消滅するわけではなく、消滅させるには解除を要する(542条1項1号)。債権者に帰責事由があるときは履行を拒めず、債務者は自己の債務を免れたことによって得た利益を償還する(536条2項)。
ひっかけ注意特定物売買では引渡し前の滅失の危険を買主が負うとする旧534条の記述が誤りとして出る。同条は削除された。
共有物の使用と対価
249条1項は各共有者が持分に応じて共有物の全部を使用できるとし、2項は別段の合意がある場合を除き、自己の持分を超える使用について他の共有者に対価を償還する義務を定め、3項は共有物の使用にあたり善良な管理者の注意を課す。判例は従来、共有者の一人が単独で占有していても他の共有者は当然には明渡しを請求できないとしており(最判昭和41年5月19日)、対価償還の明文化はこれを補完するものである。
ひっかけ注意過半数の持分を持つ共有者なら少数持分者に直ちに明渡しを請求できるとする誤りが狙われる。判例は当然の明渡請求を認めない。
受任者の義務
644条の善管注意義務は無報酬の委任でも軽減されない。受任者は委任者の請求があればいつでも事務処理の状況を報告し、委任終了後は遅滞なく経過および結果を報告しなければならない(645条)。受け取った金銭その他の物および収取した果実を引き渡し、委任者のために自己の名で取得した権利を移転する義務を負う(646条)。無報酬の受寄者が自己の財産に対するのと同一の注意で足りる(659条)のと対比される。
ひっかけ注意無償委任の受任者の注意義務が自己の財産に対するのと同一の注意に軽減されるとする誤りが定番。
特定物の保存義務
400条は、特定物の引渡しが債権の目的であるとき、債務者は引渡しをするまで契約その他の債権の発生原因および取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって保存しなければならないとする。注意の水準は債務者個人の能力ではなく契約の性質・目的から客観的に決まる。「自己の財産に対するのと同一の注意」で足りるのは、受領遅滞中の保存(413条1項)、無報酬の受寄者(659条)、相続財産の管理(918条)などの例外に限られる。違反して滅失させれば415条の責任を負う。
ひっかけ注意無報酬なら常に注意義務が軽減されるとする誤りが狙われる。無償委任の受任者は644条により善管注意義務を負う。
注文者の解除権
641条の解除は請負人の債務不履行を要件としない任意解除であり、注文者は請負人に生じた損害(既に支出した費用や得べかりし利益)を賠償しなければならない。仕事が完成した後は行使できない。注文者が破産手続開始の決定を受けたときは請負人または破産管財人が解除でき、請負人による解除は仕事の完成前に限られる(642条1項)。この場合の損害賠償の請求は、破産管財人が解除をしたときの請負人に限って認められる(同3項)。
ひっかけ注意641条の解除に請負人の債務不履行が必要とする誤り、および仕事完成後も解除できるとする誤りが狙われる。
02正誤を分ける確認順
- 1契約類型を確定する。仕事の完成が目的なら請負、事務の処理なら委任、物の保管なら寄託
- 2請負なら報酬の発生時期を見る。引渡しと同時が原則で、完成しなくても634条の割合的報酬がありうる
- 3解除の可否を確認する。注文者は完成前ならいつでも損害を賠償して解除でき、委任は各当事者がいつでも解除できる
03覚える数値
- 請負の契約不適合 知った時から1年以内に通知
- 委任の解除 効力は将来に向かってのみ生じる
04本試験の引っかけ
- 仕事を完成しなければ一切報酬を請求できないとする肢。634条の割合的報酬がある
- 建物その他の土地の工作物は解除できないとする肢。旧635条ただし書は削除されている
- 無報酬の受任者は自己の財産と同一の注意で足りるとする肢。無償寄託と混同させるもので、委任は無償でも善管注意義務を負う
05おさえる判例
修補に代わる損害賠償と報酬債権最判平成9年2月14日
瑕疵の修補に代わる損害賠償債権と報酬債権は同時履行の関係に立つ
事務管理と本人への効果帰属最判昭和36年11月30日
事務管理者が本人の名で法律行為をしても、本人が追認しない限りその効果は本人に帰属しない
06一次情報
- 根拠
- 民法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
請負・委任などの典型契約の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
民法重要度 S頻出度 13/24(編集部の目安)
危険負担
建物の売買契約の締結後、買主の責めに帰すべき事由によって引渡し前にその建物が滅失した場合、買主は、建物の引渡しを受けられない以上、売主からの代金の支払請求を拒むことができる。
全620問から科目・重要度で解く
行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。