民法
制限行為能力者と意思表示
四つの制限行為能力者で「原則が単独有効か取消しか」が逆になる点と、心裡留保・虚偽表示・錯誤・詐欺で第三者保護要件が善意か善意無過失かに分かれる点、この二つの表が正誤を決めます。強迫だけ保護規定がないことも要注意です。
要点 8件・確認問題 8問
制限行為能力者の相手方の催告権
20条の催告は1箇月以上の期間を定めて行う。単独で追認できる者(行為能力者となった本人、法定代理人、保佐人、補助人)に催告して確答がなければ追認が擬制される(20条1項・2項)。これに対し被保佐人・被補助人本人に「保佐人等の追認を得よ」と催告して期間内に通知がないときは取消しが擬制される(20条4項)。特別の方式を要する行為で方式を具備した旨の通知がないときも取消し擬制である(20条3項)。催告は相手方が悪意でも行使できる。
覚え方単独で追認できる者への催告は追認、本人経由の催告は取消し
01重要暗記項目
制限行為能力者の相手方の催告権
20条の催告は1箇月以上の期間を定めて行う。単独で追認できる者(行為能力者となった本人、法定代理人、保佐人、補助人)に催告して確答がなければ追認が擬制される(20条1項・2項)。これに対し被保佐人・被補助人本人に「保佐人等の追認を得よ」と催告して期間内に通知がないときは取消しが擬制される(20条4項)。特別の方式を要する行為で方式を具備した旨の通知がないときも取消し擬制である(20条3項)。催告は相手方が悪意でも行使できる。
ひっかけ注意無応答の効果を一律に追認擬制とする誤りが狙われる。被保佐人・被補助人本人への催告は取消し擬制である。
未成年者の行為能力
未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意を要し、同意なくした行為は取り消せる(5条1項・2項)。ただし単に権利を得または義務を免れる法律行為は同意不要で、負担のない贈与の受諾や債務免除の受領がこれにあたる。負担付贈与の受諾や弁済の受領は債務・不利益を伴うため同意が必要。目的を定めて処分を許された財産はその目的の範囲内で、目的を定めずに許された財産は自由に処分できる(5条3項)。営業を許された未成年者は、その営業に関し成年者と同一の行為能力を有する(6条1項)。
ひっかけ注意「弁済の受領は利益を得る行為だから同意不要」とする誤りが定番。債権を失う行為なので同意が必要である。
通謀虚偽表示と第三者
94条1項は相手方と通じてした虚偽の意思表示を無効とし、2項でその無効を善意の第三者に対抗できないとする。最判昭和45年7月24日は、94条2項の第三者は登記を具備することを要しないとした。虚偽表示の当事者と第三者は対抗関係に立たず、権利保護資格要件としての登記も不要と解されている。善意は虚偽表示の事実について要求され、その判断時期は第三者が法律上の利害関係を有するに至った時である。過失の有無は問わない。
ひっかけ注意「94条2項の第三者として保護されるには登記が必要」とする誤りが定番。判例は登記不要とする。
成年被後見人の法律行為
後見開始の審判は、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者について、本人・配偶者・四親等内の親族・検察官等の請求で行う(7条)。本人自身も請求できる。成年被後見人の法律行為は取り消せるが、日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消せない(9条)。成年後見人が持つのは代理権・取消権・追認権であり同意権はない。したがって後見人の同意を得てした行為も取り消せる点で、未成年者・被保佐人・被補助人と決定的に異なる。
ひっかけ注意「成年後見人の同意を得て行えば確定的に有効になる」とする誤りが狙われる。日用品購入が取消しの対象外である点も落としやすい。
被保佐人の同意を要する行為
保佐開始の審判は事理弁識能力が著しく不十分な者を対象とする(11条)。13条1項は保佐人の同意を要する行為を1号から10号に限定列挙し、元本の領収・利用、借財・保証、不動産その他重要な財産の得喪、訴訟行為、贈与・和解・仲裁合意、相続の承認・放棄・遺産分割、新築改築増築大修繕、602条の期間を超える賃貸借などがこれにあたる。日用品の購入その他日常生活に関する行為は除かれる。同意も家庭裁判所の許可も得ずにした列挙行為は取り消せる(13条4項)。
ひっかけ注意「被保佐人の行為は原則として取り消せる」とする誤りが狙われる。原則は単独で有効で、13条1項の列挙行為だけが例外である。
代理権授与表示・代理権消滅後の表見代理
改正民法は表見代理の重畳適用を条文化した。109条2項は、代理権授与の表示をした場合に表示された代理権の範囲を超える行為がされたときの本人の責任を定め、112条2項は代理権消滅後にかつての権限の範囲を超える行為がされたときの責任を定める。いずれも第三者に権限があると信ずべき正当な理由があることを要件とする。112条1項は、代理権消滅の事実を知らず、かつ知らないことに過失がない第三者を保護する。
ひっかけ注意「代理権消滅後の越権行為には表見代理が成立しない」とする誤りが狙われる。112条2項が明文で重畳適用を認めている。
取消権の期間の制限
126条は、取消権が追認をすることができる時から5年間行使しないとき、または行為の時から20年を経過したときに消滅すると定める。追認をすることができる時とは124条の要件を満たした時であり、制限行為能力者なら行為能力者となった時、詐欺なら詐欺に気づいた時、強迫なら強迫による畏怖状態を脱した時である。債権一般の消滅時効(166条1項の知った時から5年・行使できる時から10年)と数字が紛らわしいため区別しておく。
ひっかけ注意20年の起算点を「追認できる時から」とする誤りが狙われる。20年は行為の時が起算点である。
錯誤による取消し
95条1項により、法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要な錯誤に基づく意思表示は取り消すことができる。改正前の「無効」ではない。表意者に重大な過失があるときは原則として取消しができないが、相手方が悪意または重過失で知らなかったとき、および相手方が同一の錯誤に陥っていたときは例外的に取り消せる(3項)。動機の錯誤(1項2号)は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていた場合に限られる(2項)。
ひっかけ注意「錯誤による意思表示は無効である」とする改正前の記述が誤りとして出る。動機の錯誤に表示が不要とする記述も誤り。
02正誤を分ける確認順
- 1どの類型かを確定する。成年被後見人だけは同意を得ても取り消せ、被保佐人は13条1項の列挙行為だけが例外になる
- 2意思表示の瑕疵なら、無効(心裡留保・通謀虚偽表示)か取消し(錯誤・詐欺・強迫)かを分ける
- 3第三者が登場したら保護要件を当てはめる。心裡留保と虚偽表示は善意で足り、錯誤と詐欺は善意無過失、強迫には保護規定がない
03覚える数値
- 相手方の催告 1か月以上の期間を定める
- 取消権 追認できる時から5年・行為の時から20年
04本試験の引っかけ
- 制限行為能力者への催告で追認擬制と取消擬制を入れ替える肢。単独で追認できる者への催告は追認擬制、被保佐人・被補助人本人への催告は取消擬制
- 第三者保護要件に登記を付け加える肢。94条2項の第三者に登記の具備は要らない
- 重過失があれば錯誤取消しが一切できないとする肢。相手方が悪意・重過失のときや同一の錯誤に陥っていたときは取り消せる
05おさえる判例
制限行為能力者の詐術最判昭和44年2月13日
詐術は積極的な術策に限られず、黙秘していた場合でも他の言動と相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めたときは詐術に当たる
94条2項・110条の法意による類推適用最判平成18年2月23日
意思外形非対応型でも本人の帰責性が重大なときは、94条2項と110条の法意により善意でかつ過失がない第三者が保護される
06一次情報
- 根拠
- 民法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
制限行為能力者と意思表示の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
民法重要度 S頻出度 14/24(編集部の目安)
通謀虚偽表示と第三者
通謀虚偽表示の目的とされた不動産を譲り受けた善意の第三者は、所有権の移転の登記を備えていなくても、虚偽表示の当事者に対して所有権の取得を対抗することができる。
全620問から科目・重要度で解く
行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。