民法
債務不履行と契約の解除
損害賠償には債務者の帰責事由が要るのに、解除には要らない——改正民法で最も入れ替えられる要件です。催告解除のただし書(不履行が軽微なとき)と、その軽微性を主張立証するのが債務者である点も繰り返し狙われます。
要点 8件・確認問題 8問
債務不履行と帰責事由
415条1項本文は債務の本旨に従った履行をしないときまたは履行が不能であるときに損害賠償請求権が生じるとしつつ、ただし書で契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは免責するとする。帰責事由の有無は単なる故意過失ではなく契約の趣旨から判断される。2項は、履行不能、履行拒絶の明確な表示、契約の解除または解除権の発生のいずれかがあれば履行に代わる損害賠償を請求できるとする。
覚え方賠償には帰責事由が要る。解除には要らない
01重要暗記項目
債務不履行と帰責事由
415条1項本文は債務の本旨に従った履行をしないときまたは履行が不能であるときに損害賠償請求権が生じるとしつつ、ただし書で契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは免責するとする。帰責事由の有無は単なる故意過失ではなく契約の趣旨から判断される。2項は、履行不能、履行拒絶の明確な表示、契約の解除または解除権の発生のいずれかがあれば履行に代わる損害賠償を請求できるとする。
ひっかけ注意解除にも債務者の帰責事由が必要とする誤りが定番。帰責事由が要求されるのは損害賠償だけである。
債務不履行と過失相殺
418条は、債権者に過失があったときは裁判所はこれを考慮して損害賠償の責任およびその額を定めると規定する。過失相殺は必要的であり、責任そのものを否定することもできる。これに対し不法行為の過失相殺(722条2項)は「損害賠償の額を定めることができる」と任意的で、対象も額の減額に限られる。判例は、420条の賠償額の予定がある場合にも過失相殺の適用を認めている(最判平成6年4月21日)。
ひっかけ注意債務不履行の過失相殺を「額の減額にとどまる」とする誤りが狙われる。418条では責任自体を否定できる。
契約解除と帰責事由
541条・542条はいずれも債務者の帰責事由を解除の要件としていない。解除は債権者を契約の拘束力から解放する制度だからである。他方543条は、債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは解除できないと定める。帰責事由が必要なのは損害賠償(415条1項ただし書)であって、解除と損害賠償で要件が異なる。当事者双方に帰責事由のない履行不能では、債権者は解除でき、解除しなくても536条1項により反対給付の履行を拒める。
ひっかけ注意双方に帰責事由がない履行不能では解除できないとする誤りが定番。解除できるのが改正後の帰結である。
催告による解除
541条は、当事者の一方がその債務を履行しない場合に相手方が相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がないときの解除を認め、ただし書で期間経過時の不履行が契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときを除外する。軽微性は解除を争う債務者の側が主張立証する。判例は、相当の期間を定めない催告でも、催告後に客観的に相当な期間が経過すれば解除できるとする。付随的義務の違反にとどまるときは、契約目的の達成が妨げられない限り解除できない。
ひっかけ注意期間を定めない催告は常に無効とする誤りが狙われる。客観的に相当な期間が経過すれば解除できる。
催告によらない解除
542条1項は無催告での全部解除事由として、債務の全部が履行不能であるとき、債務者が全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき、一部不能または一部の履行拒絶により残存部分では契約目的を達成できないとき、定期行為の時期を徒過したとき、催告をしても契約目的を達するのに足りる履行の見込みがないことが明らかなときを挙げる。同条2項は、一部の履行不能または一部の履行拒絶の場合に、その部分について無催告での一部解除を認める。
ひっかけ注意履行拒絶があれば常に無催告解除できるとする誤りが狙われる。拒絶の意思を「明確に表示した」ことが必要である。
履行遅滞の始期
履行遅滞の始期は、確定期限のある債務は期限の到来した時(412条1項)、不確定期限のある債務は債務者が期限の到来した後に履行の請求を受けた時と期限の到来を知った時のいずれか早い時(同2項)、期限の定めのない債務は履行の請求を受けた時(同3項)である。返還時期を定めなかった消費貸借では、貸主は相当の期間を定めて返還の催告をしなければならない(591条1項)。不法行為に基づく損害賠償債務は、催告を要せず損害の発生と同時に遅滞となる(最判昭和37年9月4日)。
ひっかけ注意不法行為の損害賠償債務も期限の定めのない債務として催告時から遅滞になるとする誤りが狙われる。判例は不法行為時から遅滞とする。
追完請求権と代金減額請求権
契約不適合に対する買主の救済は、追完請求(562条)、代金減額請求(563条)、損害賠償請求および解除(564条)である。追完の方法は買主が選べるが、買主に不相当な負担を課すものでないときは売主が異なる方法によることができる。代金減額は原則として相当の期間を定めた追完の催告を要するが、追完不能や追完拒絶の明確な表示などの場合は無催告で請求できる(563条2項)。不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは請求できない。
ひっかけ注意代金減額請求に売主の帰責事由が必要とする誤りが狙われる。帰責事由が要るのは損害賠償だけである。
債権者代位権の要件
債権者代位権の要件は、債権保全の必要性(原則として債務者の無資力)、被保全債権が原則として履行期にあること(423条2項。保存行為は例外)、被保全債権が強制執行により実現できるものであること(同3項)、債務者が自ら権利を行使していないことである。被代位権利からは債務者の一身に専属する権利と差押えを禁じられた権利が除かれる(同1項ただし書)。登記請求権の代位(423条の7)など転用事例では無資力要件は不要と解されている。
ひっかけ注意登記請求権の代位でも無資力が必要とする誤りが狙われる。転用型では債務者の資力は問題とならない。
02正誤を分ける確認順
- 1損害賠償か解除かを分ける。賠償は415条1項ただし書の帰責事由が要り、解除は543条により債権者に帰責事由がある場合だけができない
- 2解除なら催告解除か無催告解除かを決める。全部不能・明確な履行拒絶・定期行為の時期の徒過などは無催告で解除できる
- 3催告解除では不履行が軽微でないかを確認する。軽微性を主張立証するのは債務者の側である
03覚える数値
- 履行遅滞の始期 確定期限は到来時・期限の定めなしは請求を受けた時
04本試験の引っかけ
- 解除にも債務者の帰責事由が必要とする肢。改正前の理解であり、現行法では不要である
- 受領遅滞があれば当然に債務不履行として解除や損害賠償ができるとする肢。受領遅滞それ自体は原則として債務不履行ではない
- 418条と722条2項を入れ替える肢。債務不履行の過失相殺は必要的で責任自体を否定でき、不法行為は任意的で額の調整にとどまる
05おさえる判例
硫黄鉱石引取義務事件最判昭和46年12月16日
継続的供給契約の性質から買主に信義則上の引取義務を認め、引取拒絶による損害賠償責任を肯定した
06一次情報
- 根拠
- 民法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
債務不履行と契約の解除の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
民法重要度 S頻出度 15/24(編集部の目安)
債務不履行と帰責事由
債務の履行が不能となった場合において、その不履行が契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、債権者は、損害賠償を請求することができない。
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行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。