行政法
裁決の種類・効力と教示
事情裁決は棄却なのに主文で違法・不当を宣言するという、結論と形式のねじれを覚えているかが要点です。教示では、書面主義が及ぶのは処分の相手方への教示だけで、利害関係人の求めに応じる教示は口頭でもよい点が狙われます。
要点 8件・確認問題 8問
裁決の効力発生
裁決は審査請求人(処分の相手方以外の者がした審査請求について処分を取り消し又は変更する裁決にあっては、審査請求人および処分の相手方)に送達された時に、その効力を生ずる(51条1項)。送達は裁決書の謄本を送付してするが、送付を受けるべき者の所在が知れない場合等には公示の方法によることができ、掲示を始めた日の翌日から起算して2週間を経過した時に送付があったものとみなされる(同3項4項)。
覚え方作成でも発送でもなく、送達された時に効力発生
01重要暗記項目
裁決の効力発生
裁決は審査請求人(処分の相手方以外の者がした審査請求について処分を取り消し又は変更する裁決にあっては、審査請求人および処分の相手方)に送達された時に、その効力を生ずる(51条1項)。送達は裁決書の謄本を送付してするが、送付を受けるべき者の所在が知れない場合等には公示の方法によることができ、掲示を始めた日の翌日から起算して2週間を経過した時に送付があったものとみなされる(同3項4項)。
ひっかけ注意作成時・発送時・到達時の取り違えが狙われる。公示送達によるみなし到達が「翌日から起算して2週間」である点も落としやすい。
事情裁決
事情裁決の要件は①審査請求に係る処分が違法又は不当であること②当該処分を取り消し又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合であること③審査請求人の受ける損害の程度、その賠償又は防止の程度および方法その他一切の事情を考慮したうえ、当該処分を取り消し又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認められることである(45条3項)。この場合、審査庁は裁決の主文で当該処分が違法又は不当であることを宣言したうえで審査請求を棄却する。
ひっかけ注意「認容」と「棄却」の取り違えが定番。違法の宣言を理由中の判断にとどめるとする肢も誤りで、主文に記載しなければならない。
教示
行政庁は不服申立てをすることができる処分を書面でする場合には、処分の相手方に対し①当該処分につき不服申立てをすることができる旨②不服申立てをすべき行政庁③不服申立てをすることができる期間の三つを書面で教示しなければならない(82条1項本文)。ただし当該処分を口頭でする場合には教示義務がない(同項ただし書)。行政事件訴訟法46条の教示(被告とすべき者・出訴期間・審査請求前置)と内容が異なる点に注意する。
ひっかけ注意教示事項に「不服申立ての理由の書き方」や「裁決の見込み」を加える肢、口頭でする処分にも教示義務があるとする肢が狙われる。
教示をしなかった場合の不服申立て
行政庁が教示をしなかった場合、当該処分について不服がある者は、当該処分庁に不服申立書を提出することができる(83条1項)。当該処分が処分庁以外の行政庁に審査請求をすべき処分であるときは、処分庁は速やかに不服申立書を当該行政庁に送付し(同3項)、送付されたときは初めから当該行政庁に審査請求がされたものとみなされる(同4項)。それ以外の場合は、初めから処分庁に審査請求がされたものとみなされる(同5項)。
ひっかけ注意教示がなければ審査請求期間の制限がなくなるとする肢。83条は提出先についての救済であり、期間の制限を外すものではない。
事情裁決における違法の宣言
事情裁決は棄却裁決の一種であるが、主文に違法・不当の宣言が置かれるため、後の国家賠償請求等で違法性の判断が援用されやすい。行政事件訴訟法31条1項の事情判決も判決主文で違法を宣言する点は同じだが、行政事件訴訟法では「不当」は宣言の対象とならない。行政不服審査法では審査庁が不当まで審査できるため、不当の宣言も可能である。事情裁決の仕組みは再審査請求にも置かれている(64条4項)。
ひっかけ注意宣言を「理由中で示せば足りる」とする肢。また事情裁決を認容裁決の一種と位置づける肢も誤りである。
利害関係人に対する教示
行政庁は、利害関係人から当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうか、不服申立てをすべき行政庁、不服申立てをすることができる期間について教示を求められたときは、当該事項を教示しなければならない(82条2項)。この教示には方式の定めがなく口頭でもよいが、教示を求めた者が書面による教示を求めたときは書面でしなければならない(同3項)。教示を求められるのは処分の相手方以外の利害関係人である。
ひっかけ注意1項の書面主義を2項にも及ぼす肢が典型。逆に1項の教示も口頭で足りるとする肢も誤りである。
効力停止の補充性
執行停止には処分の効力の停止、処分の執行の停止、手続の続行の停止の三種類があるが、処分の効力の停止は、処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるときはすることができない(25条6項)。たとえば代執行の手続が進行している場合は手続の続行の停止で足りるため、効力の停止はできない。行政事件訴訟法25条2項ただし書も同じ補充性を定めており、効力の停止だけが補充的な位置づけである。
ひっかけ注意三種類の措置に優劣がないとする肢。効力の停止だけが補充的であるという序列を押さえる。
不利益変更の禁止
審査庁は、審査請求人の不利益に当該処分を変更し、又は当該事実上の行為を変更すべき旨を命じもしくはこれを変更することはできない(48条)。再調査の請求についても同じ趣旨の規定がある(59条3項)。この原則があるため、審査請求人は不服申立てをすることで元の処分より重い処分を受ける危険を負わずに済む。取消しの方向であれば当然に可能であり、禁止されるのは不利益方向への変更である。
ひっかけ注意「審査庁は原処分に拘束されず適正な処分に是正できる」という一般論から不利益変更を認めさせる肢が狙われる。
02正誤を分ける確認順
- 1認容か棄却かを決める。取消しは全審査庁ができるが、変更は上級行政庁でも処分庁でもない審査庁にはできない
- 2公の利益に著しい障害を生じるなら事情裁決を検討する。結論は棄却だが、主文で違法・不当を宣言する
- 3教示は、処分の相手方への書面教示(82条1項)と利害関係人の求めによる教示(同2項、方式自由)を分けて当てはめる
03覚える数値
- 裁決の効力発生 審査請求人への送達時
- 公示送達 掲示を始めた日の翌日から2週間で到達とみなす
- 教示事項 不服申立てができる旨・すべき行政庁・期間 の3つ
04本試験の引っかけ
- 事情裁決を認容裁決の一種とする肢、違法の宣言は理由中で足りるとする肢。結論は棄却で、宣言は主文に置く
- 審査庁は適正な処分に是正するため不利益に変更できるとする肢。48条の不利益変更の禁止がある
- 82条1項の書面主義を利害関係人への教示にも及ぼす肢。2項の教示は方式自由で、書面を求められたときだけ書面による
06一次情報
- 根拠
- 行政不服審査法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
裁決の種類・効力と教示の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
行政法重要度 S頻出度 19/24(編集部の目安)
不利益変更の禁止
審査庁は、処分についての審査請求に理由があると認める場合には、審査請求人の不利益に当該処分を変更することもできる。
全620問から科目・重要度で解く
行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。