行政法
処分性
昭和39年のごみ焼却場事件の定式(直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定する)を当てはめたうえで、後続手続と結び付いた不利益まで見るのが現在の判例です。名称が勧告・通知でも処分性が認められる例で落とします。
要点 8件・確認問題 8問
処分性の判断基準
最判昭和39年10月29日(東京都ごみ焼却場事件)は、行政庁の処分とは公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうとし、ごみ焼却場の設置計画の都議会への提出は内部行為、工事契約の締結は私法上の行為にすぎないとして処分性を否定した。以後の判例はこの定式を出発点に、法の仕組み全体から個別に判断している。
覚え方公権力性・直接性・法効果の三つを順に当てはめる
01重要暗記項目
処分性の判断基準
最判昭和39年10月29日(東京都ごみ焼却場事件)は、行政庁の処分とは公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうとし、ごみ焼却場の設置計画の都議会への提出は内部行為、工事契約の締結は私法上の行為にすぎないとして処分性を否定した。以後の判例はこの定式を出発点に、法の仕組み全体から個別に判断している。
ひっかけ注意生活への事実上の影響の大きさで処分性が決まると誤らせる肢。基準はあくまで法律上直接に権利義務を形成・確定するかどうかである。
行政計画の処分性
最大判平成20年9月10日は、土地区画整理事業の事業計画の決定により施行地区内の宅地所有者等が建築行為等の制限を伴う法的地位に立たされ、換地処分を待って争わせるのでは実効的な権利救済にならないとして、事業計画の決定に処分性を認め、いわゆる青写真判決(最大判昭和41年2月23日)を変更した。これに対し用途地域の指定は、不特定多数への一般的抽象的な効果にとどまるとして処分性が否定されている(最判昭和57年4月22日)。
ひっかけ注意判例変更の方向を逆に覚えていると誤る。かつては処分性否定、平成20年大法廷判決で肯定に変わった。用途地域指定との区別も狙われる。
行政指導の処分性
最判平成17年7月15日は、医療法30条の7の病院開設中止勧告が行政指導であることを認めつつ、勧告に従わないまま病院を開設すると相当程度の確実さをもって健康保険法上の保険医療機関の指定を受けられなくなり、実際上病院開設を断念せざるを得ないことになるとして、実効的な権利救済の見地から処分性を肯定した。後続手続との連結によって不利益が確実に生ずる仕組みでは、行政指導であっても処分性が認められる。
ひっかけ注意「行政指導には法的拘束力がないから一律に処分性が否定される」と機械的に判断させる肢が出る。仕組み全体を見る必要がある。
処分性が認められた判例
最判平成24年2月3日は、土壌汚染対策法3条2項の通知を受けた土地所有者等が土壌汚染状況調査を実施して結果を報告すべき義務を負い、報告をしないときは命令や罰則の対象となることから、通知は直接に法的地位に変動を及ぼす行為であり処分性を有するとした。同じく最判平成15年9月4日は労災就学援護費の支給・不支給の決定に、最判平成16年4月26日は食品衛生法違反通知に処分性を認めている。
ひっかけ注意「通知」「勧告」「公表」といった名称から形式的に処分性を否定させる誘導が典型。義務や罰則につながるかどうかで判断する。
事業計画決定の処分性
最大判平成20年9月10日(浜松市土地区画整理事業事件)は、土地区画整理事業の事業計画決定により施行地区内の宅地所有者等は建築行為等の制限を伴う法的地位に立たされること、換地処分等を待って争わせるのでは事情判決により実効的な権利救済が得られないおそれがあることを理由に、事業計画決定の処分性を認め、いわゆる青写真判決(最大判昭和41年2月23日)を変更した。
ひっかけ注意「事業計画はいわゆる青写真にすぎず処分性がない」とする変更前の結論を答えさせる肢。判例変更の方向を逆に覚えていると誤る。
病院開設中止勧告の処分性
最判平成17年7月15日は、医療法30条の7に基づく病院開設中止勧告について、形式上は行政指導として定められていても、これに従わないと相当程度の確実さをもって健康保険法上の保険医療機関の指定を受けられなくなり、実際上病院の開設を断念せざるを得ないことになるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとした。名称や形式ではなく、後続の法的仕組みが生む不利益の確実性で判断している。
ひっかけ注意「行政指導だから処分性はない」と形式だけで結論づける肢。判例は後続の不利益と結合した法的仕組みに着目している。
機関相互間の行為の処分性
最判昭和53年12月8日(成田新幹線事件)は、日本鉄道建設公団に対する運輸大臣の工事実施計画の認可について、これは上級行政機関としての監督手段にすぎない行政機関相互間の行為であって、国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する行為ではないとして、取消訴訟の対象となる処分に当たらないとした。「認可」という法令上の名称ではなく、国民に対する法効果の有無で処分性が決まる。
ひっかけ注意「認可」という名称から当然に処分性があると判断させる肢が狙われる。名称ではなく国民に対する法効果の有無で決まる。
処分の意義
最判昭和39年10月29日(東京都ごみ焼却場事件)は、行政庁の処分とは公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと定義した。そのうえで、ごみ焼却場の設置行為は都が私人と対等の立場で行った私法上の行為にすぎないとして処分性を否定した。「直接」「法律上認められている」の二つが定式の要である。
ひっかけ注意定式の「直接」「法律上認められている」を落とし、事実上の不利益があれば処分に当たるとする肢が狙われる。
02正誤を分ける確認順
- 1公権力の主体としての行為かを見る。私法上の契約や機関相互間の行為なら処分性は否定される
- 2直接に国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定するかを見る。事実上の影響の大きさでは足りない
- 3名称にかかわらず、後続の法的仕組みと結び付いて不利益が確実に生じるかを検討する。実効的な権利救済の必要も考慮する
04本試験の引っかけ
- 行政指導だから処分性がないと形式で切る肢。病院開設中止勧告のように後続手続と結び付けば処分性が認められる
- 事業計画決定の処分性を否定する肢。昭和41年の青写真判決は平成20年大法廷判決で変更され、現在は肯定される
- 認可や通知という名称から当然に処分性を認める肢。鉄道建設公団への工事実施計画認可は機関相互間の行為として否定されている
05おさえる判例
東京都ごみ焼却場事件最判昭和39年10月29日
処分とは公権力の主体たる国等の行為のうち、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう
土地区画整理事業計画決定事件最大判平成20年9月10日
事業計画決定により施行地区内の宅地所有者等が建築制限を伴う法的地位に立たされるとして処分性を肯定し、青写真判決を変更した
労災就学援護費不支給決定事件最判平成15年9月4日
支給要領が法の委任に基づき法の仕組みに組み込まれていることから、支給・不支給の決定に処分性を認めた
06一次情報
- 根拠
- 行政事件訴訟法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
処分性の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
行政法重要度 S頻出度 20/24(編集部の目安)
処分性の判断基準
最高裁は、地方公共団体が計画したごみ焼却場の設置行為について、住民の日常生活に重大な影響を及ぼす以上、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとした。
全620問から科目・重要度で解く
行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。