民法
相続の承認・放棄と遺産分割
熟慮期間の起算点は相続開始の時ではなく「自己のために相続の開始があったことを知った時」です。放棄は登記なく対抗できるのに、遺産分割で法定相続分を超えた部分は登記が要るという899条の2との対比も狙われます。
要点 8件・確認問題 8問
相続の承認・放棄の期間
915条1項の熟慮期間は3箇月で、起算点は相続開始の時ではなく自己のために相続の開始があったことを知った時である。利害関係人または検察官の請求により家庭裁判所が伸長できる。相続人が承認も放棄もしないで死亡したときは、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する(916条)。承認および放棄は熟慮期間内であっても撤回することができないが(919条1項)、詐欺・強迫等を理由とする取消しは妨げられない(同2項)。
覚え方知った時から三箇月、撤回はできないが取消しはできる
01重要暗記項目
相続の承認・放棄の期間
915条1項の熟慮期間は3箇月で、起算点は相続開始の時ではなく自己のために相続の開始があったことを知った時である。利害関係人または検察官の請求により家庭裁判所が伸長できる。相続人が承認も放棄もしないで死亡したときは、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する(916条)。承認および放棄は熟慮期間内であっても撤回することができないが(919条1項)、詐欺・強迫等を理由とする取消しは妨げられない(同2項)。
ひっかけ注意熟慮期間の起算点を相続開始時とする誤りが定番。自己のために相続開始があったことを知った時である。
預貯金債権と遺産分割
従来、可分債権は相続開始と同時に法定相続分に応じて当然に分割されるとされてきたが(最判昭和29年4月8日等)、最大決平成28年12月19日は、普通預金債権・通常貯金債権・定期貯金債権について、口座の同一性が保たれたまま残高が変動する性質等を理由に当然分割を否定し、遺産分割の対象となるとした。したがって共同相続人全員の同意がなければ払戻しを受けられない。これに対し相続債務は相続開始と同時に法定相続分に応じて当然に分割承継される。
ひっかけ注意預貯金債権も相続開始と同時に当然分割されるとする改正前の判例が誤りとして出題される。
遺産分割前の預貯金債権の払戻し
909条の2は、葬式費用や当面の生計費に充てる必要から、遺産分割前でも各共同相続人が預貯金債権の一定額を単独で払い戻せるようにした制度である。上限は相続開始時の債権額の3分の1に当該相続人の法定相続分を乗じた額で、かつ同一の金融機関ごとに法務省令で定める額(現行は150万円)が限度となる。権利行使した部分は当該相続人が遺産の一部分割により取得したものとみなされ、後の遺産分割で調整される。
ひっかけ注意上限額を金融機関ごとではなく口座ごととする誤り、および150万円の上限を落とす誤りが狙われる。
法定単純承認
921条により法定単純承認となるのは、相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき(保存行為および602条の期間を超えない賃貸を除く)、熟慮期間内に限定承認も相続放棄もしなかったとき、限定承認または放棄をした後に相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、または悪意でこれを財産目録に記載しなかったときである。単純承認をすると無限に被相続人の権利義務を承継する(920条)。
ひっかけ注意被相続人の債務の弁済や形見分け程度の行為も常に「処分」にあたるとする誤りが狙われる。保存行為や短期賃貸は除かれる。
配偶者居住権
配偶者居住権は令和2年4月1日施行の制度で、被相続人の配偶者が相続開始の時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、遺産分割、遺贈、死因贈与、または家庭裁判所の審判によって取得する(1028条・1029条)。相続開始による当然取得ではない。被相続人が相続開始の時に配偶者以外の者と居住建物を共有していた場合は取得できない(1028条1項ただし書)。譲渡することができず(1032条2項)、居住建物の所有者は配偶者に設定登記を備えさせる義務を負う(1031条1項)。
ひっかけ注意配偶者が居住していれば当然に配偶者居住権が発生するとする誤りが狙われる。取得原因は限定されている。
寄与分
904条の2の寄与分は、共同相続人中に被相続人の事業に関する労務の提供もしくは財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者があるときに認められる。協議が調わないときは家庭裁判所が定めるが、その請求は遺産分割の審判の請求があった場合等に限られる(同4項)。寄与分は被相続人が相続開始の時に有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない(3項)。相続人以外の者は主張できない。
ひっかけ注意寄与分が遺贈に優先するとする誤りが狙われる。904条の2第3項により遺贈の価額を控除した残額が上限である。
配偶者短期居住権
配偶者短期居住権は、被相続人の建物に相続開始の時に無償で居住していた配偶者に法律上当然に生じる権利で、遺産分割や遺贈を要しない。居住建物について遺産分割をすべき場合は、分割により帰属が確定した日または相続開始から6箇月を経過する日のいずれか遅い日まで、それ以外の場合は取得者による消滅の申入れの日から6箇月を経過する日まで存続する(1037条1項)。使用のみが認められ収益権はない。
ひっかけ注意配偶者短期居住権にも収益権があるとする誤り、および相続放棄をすると失われるとする誤りが狙われる。
遺留分侵害額請求権の期間制限
1048条は、遺留分権利者が相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときに時効によって消滅するとし、相続開始の時から10年を経過したときも同様とする(後段は除斥期間と解される)。相続開始前における遺留分の放棄は家庭裁判所の許可を受けたときに限り効力を生じ(1049条1項)、共同相続人の一人がした放棄は他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない(同2項)。相続開始後の放棄には許可は不要である。
ひっかけ注意相続開始前の遺留分の放棄が自由にできるとする誤り、および放棄により他の相続人の遺留分が増えるとする誤りが狙われる。
02正誤を分ける確認順
- 1熟慮期間内かを確認する。起算点は自己のために相続の開始があったことを知った時で、3か月以内に単純承認・限定承認・放棄を選ぶ
- 2限定承認は共同相続人全員が共同して、放棄は各人が単独で家庭裁判所に申述する点を区別する
- 3分割の場面では対抗要件を見る。法定相続分を超えて取得した部分は、登記等がなければ第三者に対抗できない
03覚える数値
- 熟慮期間 3か月
- 預貯金の払戻し 債権額の3分の1×相続分・1金融機関150万円まで
- 具体的相続分の主張 相続開始から10年
04本試験の引っかけ
- 熟慮期間の起算点を相続開始の時とする肢。自己のために相続の開始があったことを知った時である
- 相続放棄と遺産分割で対抗要件の要否を入れ替える肢。放棄は登記不要、遺産分割の超過部分は登記が必要
- 配偶者居住権が相続開始により当然に発生するとする肢。当然に発生するのは配偶者短期居住権のほう
05おさえる判例
預貯金債権の共同相続最大決平成28年12月19日
普通預金債権等は相続開始と同時に当然分割されるものではなく、遺産分割の対象となる
死亡保険金と特別受益最決平成16年10月29日
死亡保険金請求権は受取人の固有財産で原則として特別受益に当たらないが、著しい不公平が生ずる特段の事情があれば903条を類推適用する
06一次情報
- 根拠
- 民法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
相続の承認・放棄と遺産分割の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
民法重要度 S頻出度 10/24(編集部の目安)
相続の承認・放棄の期間
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
全620問から科目・重要度で解く
行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。