憲法
思想・良心の自由と信教の自由・政教分離
政教分離は完全分離ではなく、かかわり合いが相当とされる限度を超えるかで判定します。津地鎮祭と愛媛玉串料で結論が反転する点、空知太神社では目的効果基準を明示せず総合判断した点を取り違えると失点します。
要点 7件・確認問題 7問
信教の自由と義務の免除
最判平成8年3月8日(剣道実技拒否事件)は、信仰上の理由による剣道実技の履修拒否を単なる怠学と区別すべきものとし、代替措置として他の体育種目の実技やレポート提出を認めることは、その目的が特定の宗教を援助・助長するものではなく政教分離原則に違反しないとした。そのうえで、代替措置の検討をまったくしないまま原級留置・退学という重大な結果を招く処分をした点を、裁量権の範囲を超える違法な処分であるとした。
覚え方違憲ではなく違法。裁量権の逸脱濫用という構成で救済した
01重要暗記項目
信教の自由と義務の免除
最判平成8年3月8日(剣道実技拒否事件)は、信仰上の理由による剣道実技の履修拒否を単なる怠学と区別すべきものとし、代替措置として他の体育種目の実技やレポート提出を認めることは、その目的が特定の宗教を援助・助長するものではなく政教分離原則に違反しないとした。そのうえで、代替措置の検討をまったくしないまま原級留置・退学という重大な結果を招く処分をした点を、裁量権の範囲を超える違法な処分であるとした。
ひっかけ注意「信教の自由の侵害そのものとして違憲とされた」と読ませる肢。判決の構成は校長の裁量権の逸脱・濫用による違法である。
思想及び良心の自由
最大判昭和31年7月4日(謝罪広告事件)は、民法723条の名誉回復に適当な処分として謝罪広告を命じる判決は、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものであれば、これを代替執行によって強制しても債務者の人格を無視し著しくその名誉を毀損し意思決定の自由ないし良心の自由を不当に制限することにはならないとした。もっとも、事の性質上代替執行になじまない程度の内容を強制することは許されないと解されている。
ひっかけ注意「謝罪広告はおよそ内容を問わず19条に違反する」とする肢。合憲とされたのは限度を超えない程度のものである。
政教分離違反とされた事例
最大判平成9年4月2日(愛媛玉串料事件)は、目的効果基準を適用しつつ違憲の結論を導いた初めての最高裁判決である。玉串料等の奉納は時代の推移によっても社会的儀礼として宗教的意義を失っておらず、県が特定の宗教団体との間にのみ意識的に特別のかかわり合いをもったといえるとして20条3項に違反するとした。あわせて、当該公金支出は89条が禁ずる宗教上の組織または団体に対する公金支出にも当たるとされている。
ひっかけ注意津地鎮祭事件と結論を入れ替える肢が定番。玉串料事件が20条3項だけでなく89条違反にも及んでいる点まで押さえる。
目的効果基準
最大判昭和52年7月13日(津地鎮祭事件)は、政教分離規定は制度的保障であり、国家と宗教との完全な分離を理想としつつ現実の国家制度としてこれを貫くことは不可能に近いとした。そこで20条3項が禁止する宗教的活動とは、かかわり合いが相当とされる限度を超えるものをいい、行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助・助長・促進または圧迫・干渉になる行為をいうとした(目的効果基準)。判断は当該行為の外形のみでなく一般人の宗教的評価等を考慮して客観的に行う。
ひっかけ注意「国家と宗教の完全な分離を要求するのが判例である」とする肢。判例は相当とされる限度を超えるかかわり合いのみを禁じている。
国政調査権の性質と限界
62条は各議院に国政に関する調査を行い、証人の出頭・証言および記録の提出を要求する権限を認める。通説は補助的権能説を採り、住居侵入や捜索押収のような刑事手続に類する強制はできないと解する。限界としては、司法権の独立を侵す調査(浦和事件)、検察権の行使に不当な政治的圧力を加える調査、思想内容の開示を求める調査、個人のプライバシーを侵害する調査が挙げられる。調査は各議院が独立して行使する。
ひっかけ注意独立権能説を前提に無限定な調査を認める肢が典型。また「調査には逮捕や捜索の強制手段も含む」とする肢も出る。
プライバシー権と肖像権
最大判昭和44年12月24日(京都府学連事件)は、13条は個人の私生活上の自由の一つとして、何人もその承諾なしにみだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有すると述べた。警察官が令状なく撮影できるのは、①現に犯罪が行われもしくは行われた後間がないと認められる場合であること②証拠保全の必要性および緊急性があること③その撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法であること、の3要件を満たす場合である。この場合、犯人以外の第三者が写り込むことも許容される。
ひっかけ注意「肖像権は憲法上の明文の権利である」とする肢や、3要件のうち緊急性や方法の相当性を落とした肢が出る。判例は肖像権という言葉自体は用いていない。
教育権の所在
最大判昭和51年5月21日(旭川学力テスト事件)は、国家教育権説と国民教育権説のいずれも極端かつ一方的であるとして退けた。そのうえで、親は子女の教育の自由を有し、私学教育の自由や教師の教授の自由も一定の範囲で認められるとしつつ、それ以外の領域では、国が子ども自身の利益の擁護や成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため必要かつ相当と認められる範囲で教育内容を決定する権能を有するとした。ただし子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げる国家的介入は許されない。
ひっかけ注意国家教育権説をそのまま述べる肢と国民教育権説をそのまま述べる肢の両方が出る。判例はいずれも採用していない。
02正誤を分ける確認順
- 1国家と宗教のかかわり合いが相当とされる限度を超えるかを、目的の宗教的意義と効果の援助・助長・圧迫の有無で判定する
- 2判断は行為の外形だけでなく、一般人の宗教的評価等を考慮して客観的に行う
- 3空知太神社型の事案では、無償提供に至った経緯・施設の性格・提供の態様など諸般の事情を社会通念に照らして総合判断する
04本試験の引っかけ
- 判例が国家と宗教の完全な分離を要求しているとする肢。禁止されるのは相当とされる限度を超えるかかわり合い
- 津地鎮祭事件と愛媛玉串料事件の結論を入れ替える肢。玉串料の公金支出は違憲で、憲法89条違反にも触れられている
- 剣道実技拒否事件を信教の自由の侵害として違憲としたと読ませる肢。判決の構成は裁量権の逸脱・濫用による違法である
05おさえる判例
津地鎮祭事件最大判昭和52年7月13日
目的効果基準を示し、市が挙行した起工式は目的が世俗的で効果も宗教への援助助長にならないとして合憲とした
愛媛玉串料事件最大判平成9年4月2日
玉串料等の奉納は宗教的意義を失わず、県が特定の宗教団体とのみ意識的に特別のかかわり合いを持ったとして違憲とした
空知太神社事件最大判平成22年1月20日
目的効果基準を明示せず諸般の事情を総合考慮して違憲としたうえ、違憲状態の解消手段は撤去以外にもあるとして差し戻した
06一次情報
- 根拠
- 日本国憲法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
思想・良心の自由と信教の自由・政教分離の○×一問一答
1/7問解答 0・正解 0
憲法重要度 S頻出度 14/24(編集部の目安)
目的効果基準
最高裁判所は、憲法20条3項が禁止する宗教的活動とは、その行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になるような行為をいうとしたうえで、市が体育館の起工にあたり神職主宰のもとに行った起工式はこれにあたらないとしている。
全620問から科目・重要度で解く
行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。