行政法
取消訴訟の判決の効力と事情判決
既判力は認容・棄却を問わず生じ、第三者効と拘束力は取消判決にだけ生じる——この三つの守備範囲の違いが正面から問われます。事情判決は棄却なのに主文で違法を宣言する点も、結論を認容と取り違えて落とします。
要点 8件・確認問題 8問
取消判決の拘束力
33条1項の拘束力は、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁に対し、判決の趣旨に反する行為を禁じる消極的効力と、必要な措置をとることを義務づける積極的効力をもつ。申請を却下・棄却した処分が取り消されたときは、処分庁は判決の趣旨に従い改めて申請に対する処分をしなければならない(同2項)。申請に基づいてした処分が手続の違法を理由に取り消された場合も同様である(同3項)。拘束力は執行停止の決定にも準用される(同4項)。
覚え方やってはいけない(消極)とやり直せ(積極)の二面
01重要暗記項目
取消判決の拘束力
33条1項の拘束力は、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁に対し、判決の趣旨に反する行為を禁じる消極的効力と、必要な措置をとることを義務づける積極的効力をもつ。申請を却下・棄却した処分が取り消されたときは、処分庁は判決の趣旨に従い改めて申請に対する処分をしなければならない(同2項)。申請に基づいてした処分が手続の違法を理由に取り消された場合も同様である(同3項)。拘束力は執行停止の決定にも準用される(同4項)。
ひっかけ注意拘束力が処分庁のみに及ぶとする主体のすり替えが典型。手続の違法で取り消された場合、適法な手続を踏んで同じ内容の処分をすることは拘束力に反しない点も狙われる。
取消判決の第三者効
32条1項は、処分又は裁決を取り消す判決は第三者に対しても効力を有すると定める(対世効)。同条2項はこれを執行停止の決定およびこれを取り消す決定に準用する。第三者効があるため、権利を害される第三者には訴訟参加(22条)と第三者の再審の訴え(34条)が用意されている。請求棄却判決には第三者効はなく、第三者効が生じるのは取消判決の場合に限られる。
ひっかけ注意棄却判決にも第三者効があるとする肢。第三者効は取消判決だけの効力である。執行停止決定にも準用される点は見落としやすい。
事情判決
事情判決(31条1項)は、処分が違法であるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その賠償又は防止の程度および方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分の取消しが公共の福祉に適合しないと認めるときに請求を棄却する制度である。棄却判決であるが、主文において処分が違法であることを宣言しなければならない。訴訟費用は被告の負担となり、原告は別途損害賠償を請求できる。
ひっかけ注意「請求は認容されるが処分の効力は維持される」とする効果の取り違えが典型。結論は棄却である。違法宣言を理由中でするとする肢も誤りである。
非申請型義務付け訴訟の認容要件
非申請型義務付け訴訟の本案勝訴(認容)要件は、行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められること、又は行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超えもしくはその濫用となると認められることである(37条の2第5項)。訴訟要件である重大な損害等が認められても、この本案要件を満たさなければ請求は棄却される。原告は処分の名宛人ではなく第三者であることが多い。
ひっかけ注意原告適格を処分の名宛人に絞る主体のすり替え。また認容要件を「重大な損害があれば足りる」とする肢も誤りで、訴訟要件と本案要件は別である。
既判力と拘束力の違い
既判力は認容判決・棄却判決を問わず確定判決に生じ、当事者と裁判所を後訴において拘束する(7条を介して民事訴訟法の規律による)。これに対し拘束力(33条)は取消判決にのみ生じ、関係行政庁に対して積極的なやり直し義務まで課す点で既判力と異なる。第三者効(32条)も取消判決にのみ生じる。三つの効力について、生じる判決の種類と及ぶ相手方を区別して整理する。
ひっかけ注意棄却判決にも拘束力や第三者効が生じるとする肢。三つの効力が生じる範囲の違いが正面から問われる。
第三者の訴訟参加
22条の第三者の訴訟参加は、取消判決の第三者効(32条)により権利を害されるおそれのある第三者を手続に関与させる制度である。裁判所は当事者もしくはその第三者の申立てにより又は職権で、決定をもって参加させることができ、決定をするにはあらかじめ当事者および第三者の意見を聴かなければならない。参加した第三者には民事訴訟法40条1項から3項まで(必要的共同訴訟の規律)が準用され、補助参加人より強い地位に立つ。
ひっかけ注意「第三者の申立てがなければ参加させられない」とする肢。職権でも可能である。参加人が補助参加人と同じ地位にとどまるとする肢も誤りである。
不作為の違法確認の訴えの原告適格
37条は、不作為の違法確認の訴えは処分又は裁決についての申請をした者に限り提起することができると定める。ここでいう申請は法令に基づくものであることを要するが、その申請が適法であったかどうかは本案の問題であり、現に申請をしていれば原告適格は認められる。出訴期間の定めはなく不作為が続く限り提起できるが、行政庁が何らかの処分をすれば訴えの利益は失われる。
ひっかけ注意申請が不適法であれば原告適格も否定されるとする肢。また処分がされた後も違法確認を続けられるとする肢も誤りである。
執行不停止の原則
審査請求は処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない(25条1項)。行政事件訴訟法25条1項も同じ執行不停止の原則を採る。もっとも行政不服審査法では審査庁が自ら執行停止を判断でき、裁判所の決定を要しない点で簡易である。執行停止の内容は処分の効力の停止、処分の執行の停止、手続の続行の停止その他の措置であり、審査庁の立場により職権の可否ととれる措置の範囲が異なる。
ひっかけ注意「審査請求をすれば当然に処分の効力が停止する」とする肢。停止には審査庁による別個の判断が必要である。
02正誤を分ける確認順
- 1判決が認容か棄却かをまず確定する。棄却判決には第三者効も拘束力も生じない
- 2認容なら効力を分けて当てはめる。第三者効は権利を害される第三者に及び、拘束力は処分庁と関係行政庁にやり直し義務を課す
- 3取り消すと公の利益に著しい障害を生じるなら事情判決を検討する。結論は棄却で、主文で処分の違法を宣言する
03覚える数値
- 第三者の再審の訴え 判決を知った日から30日・確定から1年
04本試験の引っかけ
- 棄却判決にも第三者効や拘束力が生じるとする肢。いずれも取消判決だけに生じる効力
- 事情判決を「請求は認容されるが処分の効力は維持される」と説明する肢。結論は棄却である
- 手続の違法で取り消された後、適法な手続で同じ内容の処分をすることが拘束力に反するとする肢。反しない
06一次情報
- 根拠
- 行政事件訴訟法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
取消訴訟の判決の効力と事情判決の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
行政法重要度 S頻出度 20/24(編集部の目安)
取消判決の拘束力
処分または裁決を取り消す判決は、その事件について、処分または裁決をした行政庁のほか、その他の関係行政庁をも拘束する。
全620問から科目・重要度で解く
行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。