民法
賃貸借(対抗要件・敷金・転貸借)
敷金の返還は明渡しが先履行で、同時履行にはなりません。無断譲渡・転貸でも背信性がなければ解除できないこと、原賃貸借が債務不履行で解除された場合に転貸借が終わるのは明渡請求の時であることが繰り返し問われます。
要点 8件・確認問題 8問
賃借権の対抗要件
605条は不動産の賃貸借を登記したときに以後その不動産について物権を取得した者に対抗できるとするが、賃借人に登記請求権はないため実効性が乏しい。借地借家法10条1項は借地上の建物の登記を、同法31条は建物の引渡しを対抗要件とする特則を置く。対抗要件を備えた賃借人は、占有を妨害する第三者に妨害の停止を、占有している第三者に返還を請求できる(605条の4)。対抗要件を備えた不動産が譲渡されると賃貸人たる地位が譲受人に移転する(605条の2第1項)。
覚え方民法は登記、借地は建物登記、借家は引渡しで対抗できる
01重要暗記項目
賃借権の対抗要件
605条は不動産の賃貸借を登記したときに以後その不動産について物権を取得した者に対抗できるとするが、賃借人に登記請求権はないため実効性が乏しい。借地借家法10条1項は借地上の建物の登記を、同法31条は建物の引渡しを対抗要件とする特則を置く。対抗要件を備えた賃借人は、占有を妨害する第三者に妨害の停止を、占有している第三者に返還を請求できる(605条の4)。対抗要件を備えた不動産が譲渡されると賃貸人たる地位が譲受人に移転する(605条の2第1項)。
ひっかけ注意賃借人が賃貸人に対して賃借権の登記を請求できるとする誤りが狙われる。特約がない限り登記請求権はない。
転貸借と賃貸借の終了
最判平成9年2月25日は、原賃貸借が賃借人(転貸人)の債務不履行により解除された場合、転貸借は賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の債務の履行不能により終了するとした。賃貸人が賃借人の債務不履行を理由に解除するにあたり、転借人に賃料支払の機会を与える必要はない(最判平成6年7月18日)。613条3項本文は原賃貸借の合意解除を転借人に対抗できないとするが、解除の当時に賃貸人が債務不履行による解除権を有していたときは対抗できる(同ただし書)。
ひっかけ注意解除前に転借人へ賃料支払の機会を与えなければ解除できないとする誤りが狙われる。判例は不要とする。
賃貸借の存続期間
604条の存続期間の上限は50年で、これより長い期間を定めても50年に短縮され、更新も更新の時から50年を超えられない。下限の定めはない。処分の権限を有しない者がする短期賃貸借の期間は、樹木の栽植・伐採を目的とする山林10年、その他の土地5年、建物3年、動産6箇月である(602条)。期間の定めがない場合、解約申入れから終了までの期間は土地1年、建物3箇月、動産・貸席1日である(617条1項)。借地借家法の適用がある場合は同法が優先する。
ひっかけ注意存続期間の上限を改正前の20年とする誤りが狙われる。現行法は50年である。
無断譲渡・転貸と解除
612条は賃貸人の承諾のない賃借権の譲渡・転貸を禁じ、違反して第三者に使用収益させたときの解除を認める。最判昭和28年9月25日は、無断譲渡・転貸があっても賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは解除できないとする信頼関係破壊の法理を示した。特段の事情の主張立証責任は賃借人が負う。小規模な同族会社への法人成りに伴う賃借権の移転や、賃借人の同居家族への使用許諾では背信性が否定されやすい。解除されない限り、賃貸人は所有権に基づいて転借人に明渡しを請求できる。
ひっかけ注意無断転貸があれば常に解除できるとする誤りが定番。信頼関係が破壊されていなければ解除は認められない。
敷金の返還時期
622条の2第1項は、賃貸借が終了しかつ賃貸物の返還を受けたとき(1号)と、賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき(2号)に敷金返還義務が生じるとする。最判昭和49年9月2日は明渡しが先履行であり、敷金返還と明渡しは同時履行の関係に立たないとした。賃貸人は賃借人が債務を履行しないときに敷金を充当できるが、賃借人の側から充当を請求することはできない(同2項)。賃貸人たる地位が移転すると敷金返還債務も譲受人に承継される(605条の2第4項)。
ひっかけ注意賃借人が未払賃料への敷金充当を請求できるとする誤りが狙われる。充当は賃貸人の側からのみできる。
賃貸人たる地位の移転
605条の2第1項は、対抗要件を備えた賃貸借の目的不動産が譲渡されたとき、賃貸人たる地位は譲受人に当然に移転するとし、賃借人の承諾を要しない。ただし譲受人が賃借人に賃料を請求するには所有権移転登記が必要である(同3項)。譲渡人と譲受人が賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨およびその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨を合意すれば地位は移転しない(同2項)。費用償還債務と敷金返還債務は譲受人に承継される(同4項)。対抗要件を備えていない場合でも譲渡人と譲受人の合意で移転できる(605条の3)。
ひっかけ注意賃貸人たる地位の移転に賃借人の承諾が必要とする誤りが狙われる。承諾は不要である。
賃貸人の修繕義務
606条1項は賃貸人に使用収益に必要な修繕義務を課すが、賃借人の責めに帰すべき事由により修繕が必要となったときは義務を負わない。賃借人が自ら修繕できるのは、通知しまたは賃貸人が知ったのに相当の期間内に修繕をしないときと、急迫の事情があるときである(607条の2)。必要費は直ちに償還を請求でき、有益費は賃貸借の終了時に償還される(608条)。一部が使用収益できなくなったときは賃料は当然に減額される(611条1項)。
ひっかけ注意一部使用不能の場合に賃借人の減額請求が必要とする改正前の記述が誤りとして出る。現行法では当然に減額される。
使用貸借の終了
使用貸借は借主の死亡によって終了するが(597条3項)、貸主の死亡では終了せず相続人が貸主の地位を承継する。期間を定めたときは期間の満了により終了し、期間を定めず使用収益の目的を定めたときは借主がその目的に従い使用収益を終えた時に終了する(同1項・2項)。目的に従った使用収益をするのに足りる期間が経過すれば貸主は解除でき(598条1項)、期間も目的も定めなかったときは貸主はいつでも解除できる(同2項)。借主は通常の必要費を負担する(595条1項)。
ひっかけ注意貸主の死亡によっても使用貸借が終了するとする誤りが狙われる。終了するのは借主の死亡の場合だけである。
02正誤を分ける確認順
- 1対抗要件を確認する。建物所有目的の借地なら借地上の建物の登記、借家なら建物の引渡しで足りる
- 2賃貸人たる地位の移転では、賃借人の承諾は要らないが、賃料を請求するには所有権移転登記が要る点を押さえる
- 3無断譲渡・転貸なら信頼関係破壊の有無を見る。背信的行為と認めるに足りない特段の事情は賃借人が主張立証する
03覚える数値
- 賃貸借の存続期間 上限50年
- 期間の定めのない解約申入れ 土地1年・建物3か月・動産1日
- 使用貸借 借主の死亡により終了(貸主の死亡では終了しない)
04本試験の引っかけ
- 敷金返還と明渡しを同時履行とする肢。明渡しが先履行である
- 無断譲渡・転貸なら当然に解除できるとする肢。背信性がなければ解除できない
- 賃貸人たる地位の移転に賃借人の承諾が必要とする肢、または登記なしに賃料を請求できるとする肢
05おさえる判例
無断転貸と信頼関係破壊の法理最判昭和28年9月25日
背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、612条2項による解除ができない
原賃貸借の解除と転貸借の終了最判平成9年2月25日
賃借人の債務不履行で原賃貸借が解除された場合、転貸借は賃貸人が転借人に返還を請求した時に履行不能となって終了する
敷金返還と明渡しの先後最判昭和49年9月2日
敷金返還請求権は明渡し完了時に発生するのであって、明渡義務と同時履行の関係に立たない
06一次情報
- 根拠
- 民法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
賃貸借(対抗要件・敷金・転貸借)の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
民法重要度 S頻出度 13/24(編集部の目安)
無断譲渡・転貸と解除
賃借人が賃貸人の承諾を得ずに賃借物を第三者に使用または収益をさせた場合、賃貸人は、その行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときでも、契約を解除することができる。
全620問から科目・重要度で解く
行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。