民法
抵当権と担保物権
法定地上権は土地共有と建物共有で結論が反転するのが最大の勾配です。物上代位では払渡し前の差押えが必要な点、留置権に優先弁済権も物上代位もない点、根抵当の元本確定請求の要件が当事者で異なる点が続きます。
要点 8件・確認問題 8問
抵当権と物上代位
抵当権に基づく物上代位は賃料債権にも及ぶ(最判平成元年10月27日)。最判平成10年1月30日は、目的債権が譲渡され第三者対抗要件が備えられた後であっても、抵当権者は自ら差押えをして物上代位権を行使できるとした。一般債権者の差押えとの優劣は、抵当権設定登記の時と差押命令の第三債務者への送達の時の先後で決まる(最判平成10年3月26日)。抵当不動産の賃借人が第三者に転貸した場合の転貸賃料には、原則として物上代位できない(最判平成17年2月22日)。
覚え方賃料には及ぶが転貸賃料には及ばない。譲渡されても差押えで追える
01重要暗記項目
抵当権と物上代位
抵当権に基づく物上代位は賃料債権にも及ぶ(最判平成元年10月27日)。最判平成10年1月30日は、目的債権が譲渡され第三者対抗要件が備えられた後であっても、抵当権者は自ら差押えをして物上代位権を行使できるとした。一般債権者の差押えとの優劣は、抵当権設定登記の時と差押命令の第三債務者への送達の時の先後で決まる(最判平成10年3月26日)。抵当不動産の賃借人が第三者に転貸した場合の転貸賃料には、原則として物上代位できない(最判平成17年2月22日)。
ひっかけ注意債権譲渡の対抗要件が先に備わると物上代位できなくなるとする誤りが狙われる。判例は物上代位を認める。
抵当権と法定地上権(更地)
388条の法定地上権の要件は、抵当権設定当時に土地の上に建物が存在すること、土地と建物が同一の所有者に属すること、土地または建物に抵当権が設定されたこと、競売により所有者を異にするに至ったことである。最判平成2年1月22日は、更地に抵当権を設定した後に建物が築造された場合、抵当権者が建物の築造をあらかじめ承認していたとしても法定地上権は成立しないとした。この場合、抵当権者は土地とともに建物を一括競売できるが、優先弁済を受けられるのは土地の代価に限られる(389条)。
ひっかけ注意抵当権者が建物築造を承認していれば法定地上権が成立するとする誤りが定番。判例はこれを明確に否定する。
抵当権と法定地上権(共有)
最判昭和44年2月14日は、土地が共有の場合、他の共有者が法定地上権の発生をあらかじめ容認していたなどの特段の事情がない限り、成立を否定する。他の共有者の持分まで負担を課すことになるからである。これに対し建物が共有の場合は土地共有者の利益を害しないため成立する(最判昭和46年12月21日)。また1番抵当権設定時に土地と建物の所有者が異なれば、2番抵当権設定時に同一所有者となっても土地抵当では成立しない(最判昭和48年9月18日)が、建物抵当では成立する(最判昭和53年9月29日)。
ひっかけ注意土地共有と建物共有を同じ結論で処理する誤りが狙われる。土地共有では原則不成立、建物共有では成立と結論が逆になる。
抵当権と賃貸借
395条1項の引渡猶予の対象は、競売手続の開始前から使用または収益をする者と、強制管理等の管理人が競売手続開始後にした賃貸借により使用または収益をする者であり、猶予期間は買受けの時から6箇月である。買受人が買受け後の使用の対価について1箇月分以上の支払を相当の期間を定めて催告し、その期間内に履行がないときは適用されない(2項)。また最判平成17年3月10日は、占有により交換価値の実現が妨げられる場合、抵当権者は抵当権に基づく妨害排除請求として自己への直接の明渡しを求めうるとした。
ひっかけ注意改正前の短期賃貸借保護(3年)と混同させる出題が多い。現行法は明渡猶予6箇月であり、賃借権が対抗できるわけではない。
根抵当権の元本確定
398条の19は、設定者が設定時から3年を経過したときに元本確定を請求でき、請求から2週間の経過で確定するとし、根抵当権者はいつでも請求でき請求の時に確定するとする。いずれも担保すべき元本の確定期日の定めがあるときは適用されない(3項)。元本確定前は被担保債権の範囲や債務者を後順位抵当権者等の承諾なく変更でき(398条の4)、確定前に債権を取得しても根抵当権を行使できない者がある(398条の7)。極度額の変更には利害関係人の承諾が必要である(398条の5)。
ひっかけ注意極度額の変更も後順位者の承諾なくできるとする誤りが狙われる。承諾不要なのは債権の範囲・債務者の変更である。
差押えを受けた債権と相殺
最大判昭和45年6月24日は無制限説を採り、差押え前に取得した債権であれば、その債権と被差押債権の弁済期の先後を問わず相殺を差押債権者に対抗できるとした。511条1項がこれを明文化している。同条2項は、差押え後に取得した債権でも差押え前の原因に基づいて生じたものであれば相殺を対抗できるとする。相殺の意思表示に条件・期限は付けられず、効力は相殺適状の時にさかのぼる(506条)。
ひっかけ注意自働債権の弁済期が受働債権より後に到来する場合は相殺できないとする制限説の記述が誤りとして出る。
留置権と牽連性の判例
最判昭和43年11月21日は、造作買取代金債権について建物との牽連性を否定し、建物の留置を認めなかった。同判決は不動産の二重譲渡で第一買主が売主に対して有する損害賠償請求権も物に関して生じた債権とはいえず、第二買主に対する留置権を認めないとする。これに対し借地人が建物買取請求権を行使した場合の代金債権については、建物のみならずその敷地の留置も認められる(最判昭和47年11月16日)。
ひっかけ注意造作買取代金債権で建物を留置できるとする誤りが定番。造作は建物とは別個の物であり牽連性が否定される。
先取特権と物上代位
304条は先取特権の物上代位を定め、目的物の売却・賃貸・滅失・損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に効力を及ぼす。行使には払渡しまたは引渡しの前に差押えをすることが必要で、この規定は質権(350条)および抵当権(372条)に準用される。一般の先取特権は共益の費用・雇用関係・子の監護の費用・葬式の費用・日用品の供給の5種(306条)、動産の先取特権は不動産賃貸借・旅館宿泊・運輸など8種(311条)、不動産の先取特権は保存・工事・売買の3種(325条)である。
ひっかけ注意払渡し後でも物上代位できるとする誤りが狙われる。差押えは払渡しまたは引渡しの前でなければならない。
02正誤を分ける確認順
- 1法定地上権は、抵当権設定当時に土地上に建物が存在し、土地と建物が同一所有者に属していたかを設定時を基準に確認する
- 2共有が絡むなら向きを見る。土地が共有なら原則として成立せず、建物が共有なら成立する
- 3物上代位を主張するなら、目的債権の払渡しまたは引渡し前に自ら差押えをしているかを確認する
03覚える数値
- 建物明渡しの引渡猶予 買受けの時から6か月
- 根抵当の元本確定請求 設定者は設定から3年経過後・請求から2週間で確定
- 不動産質権の存続期間 10年を超えられない
04本試験の引っかけ
- 更地に抵当権を設定した後に建物を築造した場合、抵当権者の承認があれば法定地上権が成立するとする肢。承認があっても成立しない
- 留置権にも物上代位や優先弁済権があるとする肢。304条が準用されるのは先取特権・質権・抵当権である
- 債権譲渡の対抗要件が備わった後は物上代位できないとする肢。抵当権者は自ら差押えをして行使できる
05おさえる判例
更地への抵当権設定と法定地上権最判平成2年1月22日
更地に抵当権を設定した後に建物が築造された場合は、抵当権者が築造を承認していても法定地上権は成立しない
土地共有と法定地上権最判昭和44年2月14日
土地が共有の場合は、他の共有者が法定地上権の発生をあらかじめ容認していた等の特段の事情がない限り成立しない
賃料債権への物上代位最判平成10年1月30日
目的債権が譲渡され第三者対抗要件が備えられた後でも、抵当権者は自ら差押えをして物上代位権を行使できる
06一次情報
- 根拠
- 民法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
抵当権と担保物権の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
民法重要度 S頻出度 15/24(編集部の目安)
抵当権と法定地上権(更地)
更地に抵当権が設定された後にその土地上に建物が築造された場合、抵当権者があらかじめ建物の築造を承認していたときは、その建物のために法定地上権の成立が認められる。
全620問から科目・重要度で解く
行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。