行政法
取消訴訟の原告適格
法律上保護された利益説を前提に、9条2項が示す考慮事項(関係法令の趣旨目的、害される利益の内容・性質・態様・程度)を順に当てはめられるかが勝負です。判例ごとに認められる範囲が違う点を丸暗記で処理すると外します。
要点 7件・確認問題 8問
取消訴訟の原告適格
9条1項は原告適格を「当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」と定め、括弧書きで処分の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後もなお取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者を含むとする。判例は「法律上の利益」を、当該処分の根拠法規が不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、個別的利益としても保護する趣旨を含むかどうかで判断する(法律上保護された利益説)。
覚え方一般的公益に吸収されず、個別的利益としても保護されているか
01重要暗記項目
取消訴訟の原告適格
9条1項は原告適格を「当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」と定め、括弧書きで処分の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後もなお取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者を含むとする。判例は「法律上の利益」を、当該処分の根拠法規が不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、個別的利益としても保護する趣旨を含むかどうかで判断する(法律上保護された利益説)。
ひっかけ注意「事実上の利益で足りる」とする肢。反射的利益や単なる経済的不利益では原告適格は認められない。9条1項括弧書は狭義の訴えの利益の条文上の根拠でもある。
無効等確認訴訟の原告適格
最判平成4年9月22日(もんじゅ訴訟)は、核原料物質等規制法の原子炉設置許可の基準が、事故による災害から周辺住民の生命・身体の安全を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むとして、重大な事故が起これば直接的かつ重大な被害を受けると想定される地域内に居住する住民に原告適格を認めた。あわせて36条の補充性の要件について、当事者訴訟等では紛争解決に適切でない場合には無効確認の訴えを認めるという柔軟な解釈を示した。
ひっかけ注意原子炉から一定距離という数値そのものが基準であるかのように問う肢。距離は認定の結果であって、判断枠組みは被害の直接性・重大性である。
第三者の原告適格に関する判例
最大判平成17年12月7日(小田急高架訴訟)は、関係法令の趣旨目的を参酌し、都市計画事業の認可について、事業地の周辺で騒音・振動等による健康または生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に原告適格を認めた。最判平成元年2月17日(新潟空港訴訟)は航空機騒音により社会通念上著しい障害を受ける周辺住民に、最判平成21年10月15日(サテライト大阪事件)は著しい業務上の支障が生ずる位置にある医療施設等の開設者にのみ原告適格を認めた。
ひっかけ注意小田急高架訴訟の対象が「都市計画決定」ではなく「都市計画事業の認可」である点や、サテライト大阪で周辺住民や施設利用者の原告適格が否定された点が狙われる。
原告適格の考慮事項
9条2項は平成16年改正で新設され、処分の相手方以外の者の原告適格を判断するに当たっては、法令の文言のみによることなく、当該法令の趣旨および目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容および性質を考慮することを求める。趣旨目的の考慮では目的を共通にする関係法令の趣旨目的をも参酌し、利益の考慮では違法な処分により害される利益の内容・性質、害される態様・程度をも勘案するものとする。
ひっかけ注意9条2項を「原告適格を拡大する新しい実体的基準を定めた規定」と説明する肢。判断の考慮事項を明文化したもので、法律上保護された利益説自体を変更したわけではない。
無効等確認訴訟の要件
36条は無効等確認の訴えの原告適格を、①当該処分に続く処分により損害を受けるおそれのある者、②その他当該処分の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者であって、当該処分の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴え(争点訴訟や当事者訴訟)によって目的を達することができないもの、に限定する。②の後半が補充性の要件である。もんじゅ訴訟(最判平成4年9月22日)はこの補充性を柔軟に解した。
ひっかけ注意補充性の要件を落として原告適格だけで判断させる肢が典型。①の類型には補充性の要件が及ばない点の整理も問われる。
審査請求人適格
行政不服審査法には不服申立適格に関する明文がないが、最判昭和53年3月14日(主婦連ジュース事件)は、公正取引委員会による果汁飲料の公正競争規約の認定について、一般消費者が受ける利益は反射的利益ないし事実上の利益にすぎず「法律上保護された利益」に当たらないとして、消費者団体等の不服申立適格を否定した。この判例により、不服申立適格は行政事件訴訟法9条の原告適格と同義に解されている。
ひっかけ注意「不服申立ては簡易迅速な救済制度だから適格は訴訟より広い」とする肢。判例は両者を同義と解している。
民衆訴訟と機関訴訟
民衆訴訟は、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう(5条)。地方自治法242条の2の住民訴訟、公職選挙法の選挙無効訴訟・当選無効訴訟が代表例である。機関訴訟は国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいい(6条)、地方自治法上の国の関与に関する訴えなどが例である。
ひっかけ注意5条の「かかわらない資格」を「かかわる資格」に入れ替える改変が狙われる。自己の利益と無関係な資格で争えるからこそ客観訴訟である。
02正誤を分ける確認順
- 1処分の名あて人か第三者かを分ける。名あて人なら原告適格は当然に認められ、争点は第三者の場合に絞られる
- 2根拠法規が当該利益を一般的公益に吸収解消させず、個別的利益としても保護する趣旨かを読む
- 39条2項に従い、目的を共通にする関係法令の趣旨目的を参酌し、害される利益の内容・性質と害される態様・程度まで勘案する
04本試験の引っかけ
- 事実上の利益や単なる経済的不利益があれば原告適格を認める肢。反射的利益では足りない
- 9条2項が原告適格を拡大する新しい実体的基準を定めたとする肢。判断の考慮事項を明文化したもので、法律上保護された利益説自体は変わらない
- 小田急高架訴訟を一般化して周辺住民なら常に原告適格があるとする肢。場外車券場事件では周辺の居住者や施設利用者の原告適格が否定されている
05おさえる判例
小田急高架訴訟最大判平成17年12月7日
都市計画事業の認可について、事業地の周辺で騒音・振動等による健康または生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に原告適格を認めた
新潟空港訴訟最判平成元年2月17日
航空法の免許基準の解釈に当たり関係法令である航空機騒音障害防止法の趣旨も考慮し、著しい騒音障害を受ける周辺住民に原告適格を認めた
場外車券場設置許可事件最判平成21年10月15日
位置基準が保護するのは医療施設等の設置者の業務上の支障であり、周辺で居住・事業を営むにすぎない者や施設利用者に原告適格はない
06一次情報
- 根拠
- 行政事件訴訟法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
取消訴訟の原告適格の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
行政法重要度 S頻出度 22/24(編集部の目安)
取消訴訟の原告適格
取消訴訟は、当該処分または裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起することができ、処分の効果が期間の経過によりなくなった後になお回復すべき法律上の利益を有する者もこれに含まれる。
全620問から科目・重要度で解く
行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。