行政法
国家賠償法1条(公権力の行使に基づく賠償責任)
「公権力の行使」は権力的作用に限らず行政指導や公立学校の教育活動も含み、「職務を行うについて」は外形で判断します。公務員個人には請求できないこと、故意・重過失は求償の要件にすぎないことの取り違えが定番です。
要点 8件・確認問題 8問
国家賠償法1条の要件
1条1項の要件は①国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が②その職務を行うについて③故意又は過失によって④違法に⑤他人に損害を加えたことである。「公権力の行使」の意義について判例・通説は非権力的作用も含む広義説を採り、行政指導、公立学校の教育活動、警察官の職務行為が含まれる一方、私経済作用は民法715条、営造物の設置管理の瑕疵は2条の領域となる。国会議員の立法行為や裁判官の裁判にも1条の適用自体はある。
覚え方広義説。私経済作用だけが1条の外に出る
01重要暗記項目
国家賠償法1条の要件
1条1項の要件は①国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が②その職務を行うについて③故意又は過失によって④違法に⑤他人に損害を加えたことである。「公権力の行使」の意義について判例・通説は非権力的作用も含む広義説を採り、行政指導、公立学校の教育活動、警察官の職務行為が含まれる一方、私経済作用は民法715条、営造物の設置管理の瑕疵は2条の領域となる。国会議員の立法行為や裁判官の裁判にも1条の適用自体はある。
ひっかけ注意「公権力の行使とは権力的作用に限られる」という狭義説の内容を判例の立場として示す肢。行政指導も対象に含まれる。
国家賠償法上の違法
職務行為基準説は、公務員が職務上通常尽くすべき注意義務に違反したかどうかを国家賠償法上の違法の基準とする考え方である。したがって処分が取消訴訟で取り消されたとしても、直ちに国家賠償法上違法となるわけではない。判例は課税処分(最判平成5年3月11日)のほか、検察官の公訴提起(最判昭和53年10月20日)、裁判官の裁判、警察官の職務行為についてもこの枠組みを用いており、取消訴訟における違法性と国家賠償法上の違法性は必ずしも一致しない。
ひっかけ注意「取消判決が確定した処分は国家賠償法上も当然に違法となる」とする肢。両者の違法概念は必ずしも一致しない。
立法不作為と国家賠償
最判昭和60年11月21日(在宅投票制度廃止事件)は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらずあえて立法するというような例外的な場合でない限り、国会議員の立法行為は国家賠償法1条1項の適用上違法とならないとした。最大判平成17年9月14日(在外邦人選挙権訴訟)はこの基準を改め、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するための立法措置をとることが必要不可欠でありそれが明白であるのに、正当な理由なく長期にわたって怠った場合には違法となるとした。
ひっかけ注意昭和60年判決の厳格な基準のみを現在の判例として示す肢。平成17年判決により違法となる場合が示され、実際に賠償が認容されている。
公務員個人の責任と求償権
判例は、国家賠償法1条は国又は公共団体が公務員に代位して責任を負う趣旨であるとして、加害公務員個人の被害者に対する直接の賠償責任を否定する(最判昭和30年4月19日)。公務員が個人として責任を問われるのは、賠償をした国又は公共団体からの求償の場面に限られ、その要件は故意又は重大な過失である(1条2項)。これに対し2条2項の求償には要件の限定がなく、他に損害の原因について責めに任ずべき者があるときに求償できる。
ひっかけ注意「故意又は重大な過失があるときは公務員個人にも請求できる」とする肢。故意・重過失は求償の要件であって被害者の請求権の要件ではない。1条2項と2条2項の求償要件を入れ替える肢も最頻出である。
規制権限の不行使
判例は、規制権限の不行使が国家賠償法1条1項の適用上違法となるのは、権限を定めた法令の趣旨・目的や権限の性質等に照らし、具体的事情の下においてその不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときであるとする。筑豊じん肺訴訟(最判平成16年4月27日)は鉱山保安法上の省令改正権限の不行使を、関西水俣病訴訟(最判平成16年10月15日)は水質二法に基づく規制権限の不行使を違法として国の責任を認めた。
ひっかけ注意「規制権限の行使は行政庁の裁量に委ねられているから不行使が違法となることはない」とする肢。裁量の消極的濫用として違法となり得る。
費用負担者の責任
3条1項は、公務員の選任監督者や営造物の設置管理者と、公務員の俸給等の費用又は営造物の設置管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた賠償の責に任ずると定める。被害者がいずれに対しても請求できるようにする趣旨である。最判昭和50年11月28日は、地方公共団体が設置する国立公園事業の周回路について、設置費用の2分の1近くを補助金として交付していた国も費用負担者に当たるとした。賠償した者は内部関係で責任のある者に求償できる(3条2項)。
ひっかけ注意3条を2条の場合にしか適用されない規定とする肢。公務員の選任監督者と俸給の負担者が異なる1条の場面にも適用される。
職務を行うについて
1条1項の「その職務を行うについて」は、被害者から見て客観的に職務執行の外形を備えているかどうかで判断される(外形標準説。最判昭和31年11月30日)。公務員の主観的な意図は問われず、非番の警察官が制服を着用して職務執行を装い強盗殺人をした事案でも、外形上職務行為に当たるとして国の責任が認められた。外形を信頼した被害者を保護する趣旨に基づく解釈である。
ひっかけ注意「公務員が自己の利益を図る目的で行った行為は職務行為に当たらない」とする肢。主観ではなく外形で判断する。
国地方係争処理委員会
国地方係争処理委員会は総務省に置かれ、委員5人で組織される。審査の対象は国の関与のうち是正の要求、許可の拒否その他の処分その他公権力の行使に当たるもの等である(250条の13)。審査および勧告は審査の申出があった日から90日以内に行う(250条の14第5項)。委員会の審査結果や勧告に不服があるとき等は、通知があった日から30日以内に高等裁判所に対し国の関与の取消し又は不作為の違法確認を求める訴えを提起できる(251条の5)。
ひっかけ注意審査期間を6か月や1年とする肢、出訴先を地方裁判所とする肢。国の関与に関する訴えは高等裁判所の専属管轄である。
02正誤を分ける確認順
- 1加害行為が公権力の行使に当たるかを見る。私経済作用なら民法715条、営造物の瑕疵なら2条の問題になる
- 2外形標準説で「職務を行うについて」を判定する。公務員の主観的意図は問わない
- 3違法性は職務行為基準説で判定する。取消訴訟で取り消されたことが直ちに国賠法上の違法を意味するわけではない
03覚える数値
- 1条2項の求償 故意または重大な過失
- 2条2項の求償 要件の限定なし
04本試験の引っかけ
- 故意または重大な過失があれば公務員個人にも請求できるとする肢。故意・重過失は求償の要件で、被害者の請求権の要件ではない
- 取消判決が確定した処分は国賠法上も当然に違法とする肢。両者の違法は必ずしも一致しない
- 立法行為や裁判官の裁判には国賠法の適用がないとする肢。適用はあるが、違法となる場面が極めて限定される
05おさえる判例
在宅投票制度廃止事件最判昭和60年11月21日
立法行為が国賠法上違法となるのは、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているのにあえて立法するような例外的場合に限られるとした
在外日本人選挙権訴訟最大判平成17年9月14日
権利行使の機会を確保するための立法措置が必要不可欠であることが明白なのに長期にわたり怠った場合には、国賠法上違法となるとして賠償を認容した
筑豊じん肺訴訟最判平成16年4月27日
規制権限の不行使は、具体的事情の下で許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるとき国賠法上違法となる
06一次情報
- 根拠
- 国家賠償法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
国家賠償法1条(公権力の行使に基づく賠償責任)の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
行政法重要度 S頻出度 14/24(編集部の目安)
公務員個人の責任と求償権
国又は公共団体が国家賠償法1条1項に基づいて損害を賠償した場合において、当該公務員に軽過失があったにとどまるときであっても、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を行使することができる。
全620問から科目・重要度で解く
行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。