行政法
国家賠償法2条(営造物の設置管理の瑕疵)と損失補償
2条は無過失責任で、通常有すべき安全性を欠いていれば足ります。予算不足は免責事由にならないのに回避可能性がなければ瑕疵が否定されること、道路と河川で求められる安全性の水準が違うことを取り違えて落とします。
要点 5件・確認問題 8問
国家賠償法2条の要件
2条1項の営造物責任は、公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったことにより損害が生じたことを要件とし、設置管理者の故意・過失を要しない無過失責任である(最判昭和45年8月20日、高知落石事件)。瑕疵とは営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、客観的に判断される。公の営造物には道路・河川などの不動産のほか、公用車、拳銃、テニス審判台といった動産も含まれる。免責が認められるのは不可抗力や回避可能性がない場合に限られる。
覚え方2条は無過失責任。通常有すべき安全性の欠如で足りる
01重要暗記項目
国家賠償法2条の要件
2条1項の営造物責任は、公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったことにより損害が生じたことを要件とし、設置管理者の故意・過失を要しない無過失責任である(最判昭和45年8月20日、高知落石事件)。瑕疵とは営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、客観的に判断される。公の営造物には道路・河川などの不動産のほか、公用車、拳銃、テニス審判台といった動産も含まれる。免責が認められるのは不可抗力や回避可能性がない場合に限られる。
ひっかけ注意「設置管理者に過失がなければ2条の責任は生じない」とする肢。1条と異なり故意・過失は要件ではない。
道路の管理の瑕疵
最判昭和50年7月25日は、故障した大型貨物自動車が87時間にわたって道路上に放置されていた事案について、道路の安全性が著しく欠如した状態が長時間継続していたのであるから、道路管理者は安全良好な状態に保つために必要とされる措置を全く講じていなかったといわざるを得ないとして管理の瑕疵を認めた。管理者が放置の事実を知らなかったことは免責の理由とならず、長時間の放置により認識可能性が肯定される。
ひっかけ注意「管理者が障害物の存在を知らなかったのであれば瑕疵はない」とする肢。長時間の放置では認識可能性が肯定される。
河川の管理の瑕疵
道路が本来的に安全であるべき人工公物であるのに対し、河川は当初から洪水等の危険を内包する自然公物であり、改修には財政的・技術的・社会的制約が伴う。最判昭和59年1月26日(大東水害訴訟)は、未改修河川については同種同規模の河川の管理の一般的水準および社会通念に照らして是認し得る安全性をもって足りるとした(過渡的安全性)。最判平成2年12月13日(多摩川水害訴訟)は改修済み河川について、計画策定時の一般水準を基準としつつ、事情変動で計画が不合理となったのに改修を怠れば瑕疵を認めるとした。
ひっかけ注意道路と同じ「通常有すべき安全性」の基準をそのまま河川に当てはめる肢。また大東水害訴訟の基準がすべての河川に妥当するとする肢も誤りである。
損失補償との違い
損失補償は適法な公権力の行使により加えられた特別の犠牲に対する調整であり、違法行為を要件とする国家賠償とは制度趣旨を異にする。最大判昭和43年11月27日(河川附近地制限令事件)は、補償規定を欠く法令であっても直接憲法29条3項に基づいて補償を請求する余地があるから、その規定が直ちに違憲無効となるものではないとした。財産権に内在する社会的制約にとどまる場合には補償を要しない(最大判昭和38年6月26日、奈良県ため池条例事件)。
ひっかけ注意「補償規定を欠く法令は当然に違憲無効となる」とする肢。判例は憲法29条3項による直接請求の余地を理由に合憲としている。
供用関連瑕疵
供用関連瑕疵(機能的瑕疵)とは、営造物自体には物的な欠陥がないものの、その利用のされ方によって周辺住民等に受忍限度を超える被害を及ぼす場合をいう。最大判昭和56年12月16日(大阪空港訴訟)は、空港の供用に伴う騒音・排気ガス等の被害について国の2条責任を認め、営造物の瑕疵は利用者に対する関係だけでなく第三者に対する関係でも問題になるとした。ただし将来の給付を求める部分の訴えは不適法とされた。
ひっかけ注意「瑕疵は営造物自体の物的欠陥に限られる」とする肢。利用者以外の第三者に及ぶ危害も瑕疵に含まれる。
02正誤を分ける確認順
- 1公の営造物の設置または管理に瑕疵があるかを、通常有すべき安全性を基準に客観的に判断する。故意・過失は要らない
- 2免責を検討する。不可抗力や損害回避可能性がなかった場合に限られ、予算不足は免責事由にならない
- 3人工公物か自然公物かで水準を変える。河川は改修の財政的・技術的制約を踏まえた過渡的な安全性で足りる
03覚える数値
- 87時間の放置 瑕疵を肯定
- 事故直前に先行車が生じさせた障害 瑕疵を否定
04本試験の引っかけ
- 設置管理者に過失がなければ2条の責任は生じないとする肢。1条と異なり無過失責任である
- 赤色灯標柱事件と87時間放置事件の結論を入れ替える肢。放置時間の長短で回避可能性の判断が分かれる
- 補償規定を欠く法令は当然に違憲無効とする肢。憲法29条3項を直接の根拠として補償を請求する余地がある
05おさえる判例
高知落石事件最判昭和45年8月20日
営造物が通常有すべき安全性を欠いていれば足り、設置管理者の故意・過失を要しない無過失責任であるとした
大東水害訴訟最判昭和59年1月26日
未改修河川については、同種同規模の河川の管理の一般的水準に照らして是認し得る安全性をもって足りるとした
河川附近地制限令事件最大判昭和43年11月27日
補償規定を欠く法令でも憲法29条3項を直接の根拠として補償を請求する余地があるから、直ちに違憲無効とはならない
06一次情報
- 根拠
- 国家賠償法
- 基準日
- 2026年4月1日
- 解説
- 編集部による書き下ろし。過去問本文は転載していません。
問題演習
国家賠償法2条(営造物の設置管理の瑕疵)と損失補償の○×一問一答
1/8問解答 0・正解 0
行政法重要度 S頻出度 14/24(編集部の目安)
国家賠償法2条の要件
最高裁判所は、国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、その責任の成立には設置管理者の過失の存在を必要としないとしている。
全620問から科目・重要度で解く
行政法240問、民法180問を中心に6科目を収録。